フィリピンにおけるマメ科およびネムノキ科有用樹の種子発芽促進処理技術
フィリピンの荒廃草地造林に広範に用いられるネムノキ科Leucaena属を含む有用樹は、火入れ加熱処理、温水加熱処理とその組み合わせにより、簡易・効率的な種子発芽を促進することができる。
背景・ねらい
フィリピン共和国の森林率は、東南アジア諸国の中で最も低位にあり、森林資源の早急な回復が望まれているが、財政上の困難を抱える政府の林業政策には限界があり、広範な造林事業に期待をかけることは難しい。今後、森林資源を回復させていくためには、地域の森林所有者や農民が自発的に森林を造成し、利用することが出来るような省力的森林造成技術を開発し、普及させていくことが重要である。第一段階として、マメ科およびネムノキ科の荒廃草地造林樹種に対する簡便な種子発芽促進技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 乾燥に強く、荒廃草地造林に適するマメ科およびネムノキ科木本種子は、給水阻害型の種皮構造を持ち、通常播種では高い発芽率を得ることが難しいことから、適切な発芽促進処理を施すことを必要とする。
- 発芽処理試験では、両科の在来有用樹8種を選出した後、播種後に周囲の草本に着火して加熱させる火入れ加熱処理、種子を一定時間温水に浸す温水加熱処理、砂により種子表面に傷を付ける加傷処理、計3種類の処理を試みる。ネムノキ科Leucaena属の3樹種は、温水加熱処理により発芽率が著しく向上し、高い促進効果が得られる。荒廃草地に播種造林を行う際の慣行手法である火入れ加熱処理においても発芽は促進するが、効果の上では最適温水処理に劣る。(表-1、図-1)。
成果の活用面・留意点
- フィリピン荒廃草地造林の最重要樹種であるネムノキ科Leucaena属の主要3種について、発芽速度、最終発芽率を著しく向上させる最適温水処理を決定した。今後、同種実生苗の簡易、確実な生産が可能となる。
- 火入れ処理の効果が温水処理に劣ることが判明したことから、荒廃草地で広範に行われている火入れ播種造林に際しては、火入れ終了後に最適温水処理を施した種子を播種することにより、種子の発芽・定着の確実性をより高められる。
具体的データ
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表 1 マメ科およびネムノキ科有用樹に対する発芽促進処理の効果
発芽促進効果は最終発芽率で評価し、Mann-Whitney検定により判定した(*は危険率 5%有意、**は 1%有意を示す)。加傷処理は効果が無く、温水処理が最も有効であるが、最適な処理温度、時間は樹種により異なる。 -
- Affiliation
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国際農研 林業部
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フィリピン大学
- 分類
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研究
- 予算区分
- 国際研究[在来有用樹]
- 研究課題
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在来有用樹の成長を促すカバ-フォレストの造成技術
- 研究期間
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平成11年(平成10~13年度)
- 研究担当者
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高橋 和規 ( 林業部 )
GASCON Antonio F. ( フィリピン大学 )
- ほか
- 日本語PDF
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1999_11_A3_ja.pdf576.12 KB