耐暑性が高い丸莢のインゲンマメ新品種「ナリブシ」
インゲンマメの結莢率は高温によって低下するが、耐暑性が高い丸莢のインゲンマメ「ナリブシ」は平均気温28°Cの高温条件でも結莢率の低下が小さく、若莢を生産することができる。
背景・ねらい
インゲンマメ(Phaseolus vulgaris L.)の結莢率は高温によって著しく低下するため、高温期にインゲンマメの若莢を生産することは難しい。国際農林水産業研究センター熱帯・島嶼研究拠点は耐暑性インゲンマメの開発を目指し、平成10年に「ハイブシ」(いんげんまめ農林1号)を初めて育成し、「ハイブシ」の優れた耐暑性と食味は高い評価を受けている。一方、「ハイブシ」と莢の形状の異なる丸莢の耐暑性品種が望まれている。
成果の内容・特徴
- 新品種候補「ナリブシ」は昭和60年に国際農林水産業研究センター(旧熱帯農業研究センター)が実施した海外遺伝資源調査において、マレーシア国で収集した雑ぱくな種子集団から、「石垣2号」として純系選抜した系統である。
- 「ナリブシ」は高温下(28.1°C:石垣市の6月の平均気温)において160~180kg/a(28,000~34,000本/a)の若莢を収穫することができる(表1)。
- 「ナリブシ」は「ハイブシ」より莢が長く(表1)、莢の中央部の横断面が円形である(図1aとb)。
- 「ナリブシ」は、無限つる性、収穫開始までの日数が50~55日の中生種で、完熟種子は黒色である(図1c)。
- 若莢のBrixは4.9であり、食味(甘味)はハイブシと同等である(表1)。
- 「ケンタッキーワンダー」、「ナリブシ」及び「ハイブシ」の結莢率は、平均気温24°Cでそれぞれ85.3%、83.3%、82.6%であり、平均気温28°Cでは23.3%、68.3%、70.1%である(表2)。このように、「ナリブシ」は「ハイブシ」と同等に高温下での結莢率の低下が少なく、耐暑性は極強である(表1)。
成果の活用面・留意点
- 品種登録出願中である。
- 若莢の生産が困難であった平均気温28°Cの高温期に若莢を生産することができるが、平均気温29°Cになると結莢率が低下するため、若莢の生産は難しくなる。
- 「ナリブシ」の耐暑性は、他品種へ耐暑性を導入するための育種素材として利用できる。
具体的データ
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表1. 「ナリブシ」、「ハイブシ」および「ケンタッキーワンダー」の特性評価
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a:開花後14日目の「ナリブシ」の若莢
b:若莢中部の横断面の形状 c:完熟種子
barは1cm -
表2.高温下における「ナリブシ」の結莢率
- Affiliation
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国際農研 熱帯・島嶼研究拠点
- 研究課題
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ハイブシの耐暑性導入による野菜用サヤインゲンの開発
- 研究期間
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2006年度(2001~2005年度)
- 研究担当者
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柏葉 晃一 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
江川 宜伸 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
大前 英 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
見える化ID: 001794庄野 真理子 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
見える化ID: 001790 - ほか
- 発表論文等
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平成18年1月初旬に品種登録出願申請
- 日本語PDF
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2006_seikajouhou_A4_ja_Part22.pdf533.83 KB