耐暑性若莢用インゲンマメ品種「石垣1号」の育成

国名
日本
要約

亜熱帯に位置する南西諸島では、高温のため夏期の野菜栽培が困難である。そこで、夏期の野菜生産品目の多様化をめざして、夏期収穫の可能な耐暑性サヤインゲン「石垣1号」を品種育成した。

背景・ねらい

 南西諸島は亜熱帯に属しかつ高地が乏しく、夏期は高温のため野菜の栽培が困難であり野菜不足のため、高価格で鮮度の低下した内地からの移入野菜に頼らざるをえない。国際農林水産業研究センター 沖縄支所では、先にこの野菜不足の解消を目指して熱帯野菜シカクマメ品種「ウリズン」を育成したが、熱帯野菜だけでなく需要が大きい温帯野菜でも耐暑性品種を開発し夏期の野菜供給を豊かにしようと考えた。
 冬春期では、沖縄県は我が国でも有数のサヤインゲンの産地である。しかし、我が国には今まで耐暑性の高いサヤインゲン品種が無かったため、6月~10月までの高温期は既存の品種は結莢できず、沖縄県にはこの期間に収穫するサヤインゲン栽培は無かった。そこで、サヤインゲンで耐暑性品種の育成を試みた。

成果の内容・特徴

  1. 石垣1号は、昭和60年に国際農林水産業研究センタ-(旧熱帯農業研究センター)が実施した遺伝資源収集探索調査において、マレーシア国で収集した遺伝資源である雑駁なサヤインゲン種子集団から、純系選抜によって育成された耐暑性の品種である(写真1、図1)。
  2. 石垣1号は鹿児島県、沖縄県、東京都小笠原など夏期に高温となる地域で、結莢における耐暑性が高く、夏期栽培で収量性が高く高温による若莢の品質劣化も少ないと評価された。
  3. 石垣1号は、無限つる性、収穫始期までの日数は播種期を問わず約50日の中生の品種で、花は赤紫色、種子は小粒の黒色、若莢は地色が淡緑で軽く曲がり、筋を有する平莢の品種である。
  4. 石垣1号の結莢のための耐暑性の限界温度は28.0~29.5°Cの範囲にあり、平年の気温であれば南西諸島の多くの地点で夏期栽培が可能である(図2)。
  5. 耐暑性限界以下の気温条件下では、夏期栽培で石垣1号は収穫期間2カ月間で3t/10a程度の収量が得られ、食味は既存品種に同等である。

成果の活用面・留意点

若莢の地色が淡く筋ありインゲンであるため内地市場での評価は低い。低温期には収量性が低いため冬期栽培の適応性は低い。東京都の八丈島以南、鹿児島県の南西諸島部や沖縄県の夏期栽培の地場消費用として普及すると考えられる。

具体的データ

  1. 写真1
  2. 図1
  3. 図2
Affiliation

国際農研 沖縄支所

分類

普及

予算区分
経常 高収益畑作
研究課題

新規作物導入による新作付方式の開発

研究期間

1985~1994年度

研究担当者

中野 ( 沖縄支所 )

桃木 徳博 ( 沖縄支所 )

大塚 紘雄 ( 農業環境技術研究所 )

宮重 俊一 ( 農林水産省熱帯農業研究センター )

花田 俊雄 ( 沖縄支所 )

杉本 ( 農研機構 九州沖縄農業研究センター )

中川 ( 農研機構 畜産草地研究所 )

小林 ( 沖縄支所 )

松岡 ( 沖縄支所 )

寺内 方克 ( 沖縄支所 )

安田 慶次 ( 沖縄県農業試験場 )

大城 正市 ( 沖縄県農業試験場 )

ほか
発表論文等

Nakano, H. et. al. (1994) Collection of Common Bean (Phaseolus vulgaris) Germplasm in Malaysia and Thailand and Its Potential of Heat Tolerance. Japanese Journal of Tropical Agriculture 38. p.239-245.

日本語PDF

1994_14_A3_ja.pdf1.34 MB

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