国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

塩害軽減のための低コスト浅層暗渠排水技術マニュアル

要約

乾燥・半乾燥地域の灌漑農地における塩害軽減対策のための技術マニュアルである。塩類集積の要因と対策を示し、リーチング効果促進のため圃場の排水性の改善を図る低コスト型浅層暗渠排水技術を解説している。マニュアルは政府関係者、水消費者組合、農家が利用する。

背景・ねらい

乾燥・半乾燥地域に属する中央アジアでは、1950年代からアムダリア・シルダリア川を水源とする大規模な灌漑開発によって農業生産が飛躍的に向上したが、不適切な水管理によって塩類集積が生じており、中でもウズベキスタン共和国は土壌の塩類化面積が最も大きい。土壌の塩類集積は、農業生産へ深刻な影響を及ぼし、同国では塩害対策として排水路の造成・浚渫や多量の水で塩分を溶解させ浸透除去するリーチングなどが行われている。しかし、依然として、塩害が改善されていない圃場が多く見られ、リーチング効果を確実に発現する技術が必要となっている。そこで本研究では、圃場内のリーチング浸透水の排水を促進する浅層暗渠排水技術を検証する。低コスト化を図るため、浅層暗渠排水には、日本において水田汎用化を目的に開発されたパイプ等の資材を用いず地表面下60~90 cmに空洞を形成する暗渠施工機(以下、機械本体を穿孔機、穿孔機で施工された暗渠をカットドレーンという)を使用する。乾燥地の塩害農地において、リーチング効果の向上を目的とするカットドレーンの適用は初めての試みである。検証された技術はマニュアルとして取りまとめ、塩害対策に取り組む政府関係者、水消費者組合、農家による利用を図る。

成果の内容・特徴

  1. 技術マニュアルはA4版72ページの冊子で、「塩類集積の要因と主な対策」、「実証試験地域の塩類化の要因」及び「浅層暗渠排水技術」で構成され(表1)、農家を含むユーザーが理解しやすい写真やイラストを多く用いている(図1)。
  2. 管暗渠とカットドレーンを組み合わせた浅層暗渠排水技術の導入計画、施工方法、施工に適した土壌条件(土性・水分状態)、空洞部の崩落等の問題と対策について解説している。
  3. 浅層暗渠排水技術の適用による高塩分濃度の浸透水の流出(図2)、土壌塩分濃度の低下、綿花収量の約20%増加を効果として示している(図3)。

成果の活用面・留意点

  1. マニュアルは、乾燥・半乾燥地域での適用が期待される。
  2. カットドレーンは、適用可能な土壌条件が定められている。砂やシルト分の少ない土性、硬く乾燥していない水分状態の圃場で施工する。
  3. マニュアルは、日本語英語版の他、ウズベキスタン共和国の農家組合(フェルメル評議会)及び研究機関の合意の下、ロシア語版を作成している。また、圃場で利用しやすい簡略版(A5判、英語ロシア語ウズベク語版)も作成している。
  4. 穿孔機の製作・購入は農家単独では高額であり、利用・アクセスにはフェルメル評議会等によるサポートが必要である。

具体的データ

  1. 表1 技術マニュアルの章構成と主な内容

    タイトル
    内容
    序  章
     
    塩害の背景とJIRCASの調査目的
    1
    塩害
    塩害の影響とメカニズム
    2
    塩害予防と除塩対策
    灌漑排水による予防と集積塩分除去対策
    3
    塩類集積土壌のモニタリングと原因の特定
    土壌塩類化の原因特定と調査項目
    4
    浅層暗渠排水による灌漑農地の塩類集積対策
    浅層暗渠排水の計画、施工、塩害への効果
    5
    まとめと提言
    浅層暗渠排水導入時の留意点
  2. 図1 技術マニュアルに用いた写真やイラストの例
    図1 技術マニュアルに用いた写真やイラストの例
  3. 図 2 集水渠末端の排水口
    高塩分濃度のリーチング浸透水が流出
    図2 集水渠末端の排水口
  4. 図3 浅層暗渠導入圃場の収量と土壌塩分濃度
    注)・収量調査(綿花)及び土壌採取(深さ1 mまで)は2017年9月実施
      ・綿花収量の異なるアルファベットは有意差あり(農家A: p<0.05、農家B: p<0.01)
      ・土壌塩分濃度はカットドレーン区でより低かったが、対照区との差は有意ではなかった
    図 3 浅層暗渠導入圃場の収量と土壌塩分濃度
所属

国際農研農村開発領域

分類

技術

国名
  • ウズベキスタン
  • 研究課題

    地下水制御による農地塩害対策調査

    プログラム名

    資源・環境管理

    予算区分

    交付金アジア・島嶼資源管理

    受託農林水産省・農村振興局

    研究期間

    2017年度(2013~2017年度)

    研究担当者
  • 奥田 幸夫 (農村開発領域)
  • 大森 圭祐 (農村開発領域)
  • 大西 純也 (農村開発領域)
  • 発表論文等

    「塩害対策のための浅層暗渠排水技術マニュアル」 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/manual_guideline

    塩害軽減のための浅層暗渠排水技術マニュアル

    奥田ら(2017)農業農村工学会論文集, 305(85-2):83-90 DOI: 10.11408/jsidre.85.II_83

    Omori et al. (2018) 日本砂丘学会誌 Vol.64-3:101-112

    大西ら(2017)沙漠研究, 27(3):91-101 DOI: 10.14976/jals.27.3_91

    奥田ら(2015)農業農村工学会誌, 83(5):21-24

    奥田ら(2015)農業農村工学会誌, 83(7):7-10

    日本語PDF
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