サイレージ調製はソルガムとトウジンビエ茎葉部の飼料利用率を向上させる

要約

西アフリカ半乾燥地域においてソルガムとトウジンビエの茎葉部は反芻家畜の主な粗飼料源であるが、収穫後に放置すると栄養成分が減少する。しかしサイレージとして調製することで良質に発酵しその飼料利用率は向上して、乾季における飼料不足の緩和が期待される。

背景・ねらい

ソルガム(Sorghum bicolor [L.] Moench)とトウジンビエ(Pennisetum glaucum L.)は西アフリカ半乾燥地域における主要作物であり、両作物の穂収穫後の茎葉部は、屋外で保存(放置)され、反芻家畜にとって飼料が著しく不足する乾季中の粗飼料として利用される。しかし飼料資源の乾燥が、この地域で唯一の保存方法であり、保存期間が長くなるにつれて栄養成分の溶脱や分解により、その飼料としての栄養価値は低下する。そこで、これら作物の茎葉部をサイレージに調製することで飼料成分が保持されるとともに飼料利用率が改善され、乾季飼料不足の緩和と家畜生産性の向上が期待できる。

成果の内容・特徴

  1. ソルガムとトウジンビエの茎葉部は、穂収穫直後の新鮮なものと比較して、120日間放置した場合、粗蛋白質と粗脂肪の含量およびエネルギーは減少し、繊維とリグニン等の難消化性炭水化物含量が相対的に増加する。一方、サイレージを調製した場合、貯蔵120日後の栄養成分の減少が少なく、良質に保持される(図1)。
  2. 収穫直後のそれぞれの作物の茎葉部には乳酸菌が付着しているが、120日間放置した後には好気性細菌、大腸菌群、酵母及び糸状菌等、サイレージ発酵に対する不良微生物が多くなり、乳酸菌は検出されない。一方、貯蔵120日後のサイレージでは乳酸菌が優勢となり、不良微生物の増殖は抑制される。微生物の菌種構成について、同じ処理区内では作物間で差は見られない(図2)。
  3. このサイレージ調製によれば、乳酸発酵によるpHの低下及び低水分による酪酸発酵の抑制により、貯蔵過程における腐敗の発生がなく、長期間にわたり栄養成分を保持できる。
  4. 在来種肉牛15頭(平均体重257.4±13.5 kg)を供試し、濃厚飼料1 kgと粗飼料(放置、あるいはサイレージ調製したソルガム茎葉部)を自由採食させる飼養試験では、採食量と飼料利用率が、放置のものからサイレージ調製することにより大幅に改善される(図3)。

成果の活用面・留意点

  1. 作物の茎葉部を用いたサイレージは、西アフリカ半乾燥地域の農家において簡易に調製でき、反芻家畜用貯蔵飼料として乾季飼料不足の緩和に活用できる。
  2. このサイレージの調製技術は、CNRST(ブルキナファソ国家科学研究技術センター)の技術書として発刊され、現地の家畜飼養技術の改善に活用される。
  3. 収穫直後のソルガムとトウジンビエの茎葉部は低水分のため、サイレージを調製する際の水分調整について留意する。
  4. 飼料利用率は、家畜採食量と飼料給与量の乾物比により計算している。

具体的データ

  1. 図1作物茎葉部の屋外での放置とサイレージ調製(左)による飼料成分の変化(右)​​​​​​

    a, b: t 検定で有意差 (p < 0.05) あり。

     

  2. 図2 作物茎葉部の保存方法の違いによる微生物の菌種構成

     

  3. 図3ソルガム茎葉部の保存方法の違いによる肉牛の乾物採食量と飼料利用率​​​​​​

    a, b: t 検定で有意差(p < 0.05)あり。n=15。飼料利用率=家畜採食量/飼料給与量×100%。 

Affiliation

国際農研 生産環境・畜産領域

分類

研究

研究プロジェクト
プログラム名

資源・環境管理

予算区分

交付金 » アフリカ流域管理

研究期間

2020年度(2016~2020年度)

研究担当者

義民 ( 生産環境・畜産領域 )

山崎 正史 ( 生産環境・畜産領域 )

Jethro Delma ( ブルキナファソ環境農業研究所 )

Nignan Man ( ブルキナファソ環境農業研究所 )

ほか
発表論文等

Cai Y et al. (2020) Animal Science Journal, 91(1):e13463

https://doi.org/10.1111/asj.13463

日本語PDF

2020_A05_A4_ja.pdf454.81 KB

2020_A05_A3_ja.pdf454.48 KB

English PDF

2020_A05_A4_en.pdf475.34 KB

2020_A05_A3_en.pdf476.26 KB

ポスターPDF

2020_A05_poster.pdf265.1 KB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。

関連する研究成果情報