国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

ギニアヤムのゲノム情報の解読および性判別マーカーの開発

要約

ヤマノイモ(Dioscorea)属作物の一種であるギニアヤム(D. rotundata)の全ゲノム配列を世界に先駆けて解読した。得られたゲノム情報からギニアヤムの性別を決定するゲノム領域を同定した。この領域に特異的な性別判定マーカーを用いることで品種改良を加速できる。

背景・ねらい

アフリカではヤムが主食として広く栽培され、「ヤムベルト」と呼ばれる西アフリカのギニア湾岸一帯で、世界の生産量の約95%(5,400万トン)が生産されている(図1)。特にギニアヤム(D. rotundata)は、この地域の食生活に欠かすことのできない重要な主食作物であると共に、農家の主要な換金作物である。しかし、利用対象が地下部であり、経時的な栽培試験や調査が難しいなどの理由から、生産性や品質向上に向けた育種研究はほとんど進んでいなかった。また、雌雄が品種・系統によって異なり、開花しないと性別が判断できないことも効率的な育種の大きな妨げとなっていた。こうした状況を踏まえ、ヤムの育種の効率化を図るため、その基盤となる科学的情報の整備や技術開発に関する国際共同研究を実施している。本研究では、ヤムのDNA情報に基づいた育種を可能にするため、ギニアヤムのゲノム配列を解読する。また、ゲノム情報を基に性別を決定する遺伝子座を同定し、幼植物期での性別の推定を可能にするDNAマーカーを開発する。

成果の内容・特徴

  1. フローサイトメトリーによるゲノムの推定値を超す594Mb(5.94億塩基)を解読した結果、合計で26,198個の遺伝子があると推定される(図2)。
  2. この内、ゲノム配列が決定されているモデル植物3種(イネ、シロイヌナズナ、ミナトカモジグサ)で推定された遺伝子と相同な(祖先を共通とする)遺伝子は5,557個、独自の遺伝子は12,625個である(図2)。
  3. 雌雄の分離が認められたギニアヤムF1分離集団(雄株と雌株の交雑によって生じる第一代目の子孫)の全ゲノム配列の解析により、ギニアヤムの雌がもつ特有のDNA配列を含む遺伝子領域を特定し、この領域の配列を基に開発したDNAマーカーにより幼植物期のギニアヤムの雄株・雌株推定が可能である(図3)。

成果の活用面・留意点

  1. 開発した性別判定マーカーを用いることで、通常の栽培では確実な性別の判別に2〜3年を要するところ、幼植物期に開花を待たずに優れた性質を持つ品種・系統を育種親として選定できるとともに、試験栽培で扱う個体数や圃場面積も縮小できる等、ギニアヤムの育種の効率化が期待できる。
  2. F1集団や多様な遺伝資源にゲノム解析技術を活用し、効率的なヤムの遺伝解析を可能にするためには、今後、農業・品質形質の評価をさらに進める必要がある。
  3. 農業・品質形質の遺伝解析により、将来的にギニアヤムの生産性や栄養価の改良を加速し、西アフリカにおける食料生産、栄養改善に貢献することが期待できる。また、ギニアヤムのゲノム情報を利用することで、他のヤマノイモ属作物の育種の効率化にも貢献できる。

具体的データ

  1. 図1 西アフリカにおけるヤムの栽培(左)とヤム市場(右)
    図1 西アフリカにおけるヤムの栽培(左)とヤム市場(右)
  2. 図2 ギニアヤムと主なモデル植物の遺伝子の比較
    図2 ギニアヤムと主なモデル植物の遺伝子の比較

    ギニアヤムのゲノム解析による遺伝子と、ゲノム配列がわかっている主なモデル植物における遺伝子との比較。数字は遺伝子数。楕円の外は各植物で推定された合計遺伝子数(重複遺伝子を含む)。楕円内の数はそれぞれの比較で相同な遺伝子の数(重複遺伝子群は1つとする)。
  3. 図3 DNAマーカーを用いたギニアヤムの性別推定
    図3 DNAマーカーを用いたギニアヤムの性別推定

    (a)雄花。(b)雌花。(c)雌株の決定に関わる遺伝子領域の近傍にある配列のDNAマーカー(sp16)を用いたところ、雄株と雌株を交雑したF1後代のうち、雄花(♂)を付けた株ではDNAが検出されず、雌花を付けた株(♀)ではDNAが検出された(赤矢印の位置のバンドの有無)。下段(Actin)はコントロールとして検出したアクチン遺伝子。
所属

国際農研熱帯・島嶼研究拠点

分類

研究

研究プロジェクト

アフリカの食料問題解決のためのイネ、畑作物等の安定生産技術の開発(アフリカ食料)

プログラム名

農産物安定生産

予算区分

交付金アフリカ食料

交付金熱帯作物開発

研究期間

2017年度(2011~2020年度)

研究担当者
  • 山中 愼介 (熱帯・島嶼研究拠点)
  • 村中 (研究戦略室)
  • 高木 洋子 (熱帯・島嶼研究拠点)
  • Tamiru Muluneh (岩手生物工学研究センター)
  • 寺内 良平 (岩手生物工学研究センター)
  • Asideu R (国際熱帯農業研究所)
  • 発表論文等

    Tamiru M et al. (2017) BMC Biology, 15:86 https://doi.org/10.1186/s12915-017-0419-x

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