国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

ガーナの河川氾濫原が畔のない天水条件でも生産性の高い稲作適地となる

要約

ガーナで未利用の河川氾濫原は、畦畔および灌漑設備のない天水条件においても、土壌炭素量の高い土地の選定と、欠乏する硫黄成分の施用を組み合わせることで、施肥窒素の利用効率に優れ、最大5.4 t ha-1の籾収量を実現する優良な稲作可耕地となる。

背景・ねらい

ガーナの河川氾濫原は比較的肥沃度の高い土壌をもち、季節的に湛水することから、イネ可耕地として期待が大きい。しかし、その多くは農耕地として未利用である。これまで、ボルタ川流域の氾濫原では、水源(河川および後背湿地)に近づくほど、指数関数的に土壌炭素量および雨期の湛水可能性が増大すること、土壌の硫黄欠乏が存在することを明らかにしている(平成24年度国際農林水産業研究成果情報13同14)。そこで、水源からの距離が異なり、既存の農耕地から未利用の低湿地に至る連続的な地形条件でイネを栽培することにより、河川氾濫原におけるイネの生産性の高さを実証するとともに、その環境に適した効率的な施肥技術を提案する。

成果の内容・特徴

  1. 対象となる河川氾濫原では、畦や灌漑設備なしに、季節的な自然湛水が生じる(図1)。
  2. 水源からの距離400 m以内の範囲に、土壌炭素量が高く、未利用の低湿地が広がる(図2、平成24年国際農林水産業研究成果情報14参照)。
  3. 幅広い降水条件*において、水源に近く土壌炭素量の大きい未利用の低湿地(L1~L4)が既存の農耕地(L5~L7)に比べて高い生産性をもち、窒素(N)と硫黄(S)を施用することで、平均3.2~4.0 t ha-1、最大5.4 t ha-1の籾収量が得られる(図3)。
  4. 窒素利用効率(窒素投入量あたりの籾増収量)**は、硫黄を加えることで倍増する。特に未利用低湿地(L1~L4)の窒素利用効率が既存の農耕地(L5~L7)に比べて高く、硫黄を加えることで28.4~32.6の値が得られる(表1)。
  5. 3、4で挙げた未利用低湿地(L1~L4)の収量および窒素利用効率は、いずれも同地域の灌漑水田と同等の値である。
  6. 本成果は、灌漑設備および肥料投入が限られたガーナにおいて、天水条件でのイネの生産性に優れた河川氾濫原に広がる未利用地の存在と硫黄施用の効果を実証するものである。

* 冠水リスクの高い生育初期の降水量として、2010~2015年が51~194mm、試験期間中が105~194mm。
**

成果の活用面・留意点

  1. 本成果は西アフリカにおける未利用の河川氾濫原に広く適用できる可能性がある。
  2. 硫黄成分の施用は、硫酸アンモニウムを播種時に表層施肥するだけで十分な効果が得られる。
  3. 本成果をもとに未利用低湿地の更なる活用が期待されるが、農家がイネ栽培を実践するためには、冠水による減収リスクの長期的観測や同環境へのトラクターのアクセス向上が求められる。

具体的データ

  1. 図1 河川氾濫原に広がる未利用低湿地(L1付近)での自然湛水の様子
    図1 河川氾濫原に広がる未利用低湿地(L1付近)での自然湛水の様子
  2. 図2 試験圃場7地点の地形条件と土壌炭素量の変異
    図2 試験圃場7地点の地形条件と土壌炭素量の変異
  3. 図3 圃場の地形条件と施肥処理がイネ収量に及ぼす効果
    図3 圃場の地形条件と施肥処理がイネ収量に及ぼす効果

    *6月15日~7月15日の積算降水量。2012年は同時期の降水量が観測期間中(2010~2015年)で最も多く、L1で出芽直後に6日間の完全冠水が生じた。ただし、L5~L7に比べて高い収量を維持。
  4. 表1 圃場の地形条件と硫黄施用が窒素利用効率に及ぼす効果
    施肥処理* L1 L2 L3 L4 L5 L6 L7 全圃場平均
    窒素のみ 14.0b 11.0b 23.6a 23.0b    8.7a   8.8b 0.6b 13.4b
    窒素+硫黄 28.8a 32.1a 28.4a 32.6a  10.2a 15.0a 4.0a 22.8a
    同一アルファベットを付した数値は5%水準で処理間に有意差なし (Tukey HSD)。数値は各圃場の3か年の平均値。
    *窒素は尿素もしくは硫酸アンモニウムとして60 kg ha-1等量、硫黄は硫酸アンモニウムもしくは硫酸ナトリウムとして10~68 kg ha-1等量をそれぞれ基肥として施用。硫黄成分の施用はいずれの資材および施用量でも同等の効果を示した
分類

研究

国名
  • ガーナ
  • 研究課題

    アフリカにおけるコメ生産向上のための技術開発

    プログラム名

    農産物安定生産

    予算区分

    交付金アフリカ稲作振興

    研究期間

    2017年度(2011~2015年度)

    研究担当者
  • 辻本 泰弘 (生産環境・畜産領域)
  • 小田 正人 (生産環境・畜産領域)
  • 圭佑 (京都大学)
  • 藤原 洋一 (石川県立大学)
  • 坂上 潤一 (鹿児島大学)
  • Inusah Baba (ガーナ国サバンナ農業研究所)
  • Fuseini Abraham (ガーナ国サバンナ農業研究所)
  • Dogbe Wilson (ガーナ国サバンナ農業研究所)
  • Zakaria Alhassan I. (ガーナ国サバンナ農業研究所)
  • 日本語PDF
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