電照処理を利用した早期出穂性エリアンサスの出穂遅延技術
サトウキビより出穂が早い日本で収集されたエリアンサスの出穂は、電照処理により遅延させることが可能である。株出し時期を遅らせた材料に処理を実施することで遅延効果が高まる。出穂を遅延させた穂は花粉親としてサトウキビとの属間交配等に利用可能である。
背景・ねらい
エリアンサス(Erianthus arundinaceus)は、バイオマス生産性が高く、干ばつ等の不良な環境への適応性も優れるため、世界的にサトウキビ改良のための育種素材として注目されている。しかし、出穂がサトウキビより早いためにサトウキビとの属間交配に利用できない早期出穂性の遺伝資源が多く存在することが課題であった。そこで、早期出穂性のエリアンサス系統とサトウキビとの多様な属間交配を実現することを目的とし、日本で収集された早期出穂性のエリアンサス系統を利用して、電照処理による出穂遅延技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 国際農林水産業研究センターが保有する日本で収集されたエリアンサス遺伝資源の石垣島における出穂期は、自然日長条件下で11月から出穂が始まるサトウキビ育種素材より早く、最も早いJW630は9月中旬、最も遅いJW4は10月下旬である。
- 出穂遅延のための電照処理(図1)では、夏至翌日の6月22日から8月23日まで14時間の長日処理(電球から1m真下における照度は約500lux)を実施して花芽分化を抑制し、8月24日から2週間毎に日長時間を30分減少させる短日処理を自然日長条件になるまで実施して花芽分化を誘導する。
- 電照処理によりJW630、JW4の出穂を遅延させることが可能であり、株出し(地上部を収穫して地下に残る株から茎を再生させること)の時期を遅らせて生育量を抑制した材料に電照処理を実施することで出穂遅延の効果が高まる。JW630、JW4の電照区と自然日長区の平均出穂日の差は、それぞれ4月株出し区では2日、8日であったのに対し、6月株出しでは8日、13日、7月株出し区では20日、18日である(図2、3)。
- 7月株出しの材料に電照処理を実施することで、JW630は11月上旬~中旬、JW4は11月上旬~下旬に出穂するサトウキビ育種素材との属間交配が可能となる(図3)。
- 出穂を遅延させたエリアンサスの花粉発芽率は、JW630、JW4ともに25%以上であり、それぞれ花粉親としてサトウキビとの交配に利用できる。
成果の活用面・留意点
- 本成果は、早期出穂性のエリアンサスをサトウキビとの属間交配に利用する場合に活用できる。
- エリアンサス自体をエネルギー作物として利用するための新品種開発においても活用可能である。
- JW630については11月下旬以降、JW4については12月以降に出穂するサトウキビとの交配を実現するために、更なる出穂期の遅延に向けた技術開発やサトウキビの出穂を早める技術との組み合わせが必要である。
具体的データ
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2011年8月、JIRCAS熱帯・島嶼研究拠点 -
JIRCAS熱帯・島嶼研究拠点 -
2年間の試験(2010年、2011年)の平均値を示す。分散分析の結果、JW630、JW4ともに株出し時期間、日長処理間に有意差(p<0.05)が、株出し時期と日長処理間に交互作用が認められた(p<0.05)。JIRCAS熱帯・島嶼研究拠点におけるサトウキビ育種素材の出穂期は、例年11月上旬から12月下旬である。参考として、データがある2009年のサトウキビ育種素材(155品種・系統)の出穂期の分布を図右下の頻度分布で示す。
- Affiliation
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国際農研 熱帯・島嶼研究拠点
- 分類
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研究
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » 高バイオマス資源作物
- 研究期間
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2017年度(2009~2020年度)
- 研究担当者
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寺島 義文 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
杉本 明 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
科研費研究者番号: 30414840高木 洋子 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
安藤 象太郎 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
伊禮 信 ( 沖縄県農業研究センター )
田金 秀一郎 ( 九州大学 )
林 久喜 ( 筑波大学 )
科研費研究者番号: 70251022 - ほか
- 発表論文等
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Tagane S et al. (2011) Trop. Agr. Develop. 55(1): 44-50
Terajima Y et al. (2017) Trop. Agr. Develop. 61 (3): 107-116
- 日本語PDF
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A3 280.64 KB
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A4 184.18 KB
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- ポスターPDF
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