サトウキビの早期高糖性とショ糖蓄積関連酵素の活性
南西諸島のサトウキビ生産には「品質取引」制度が導入され、茎原料の高品質性(高糖性)が重視されている。早期高糖性の基幹品種「NiF4」では、ショ糖蓄積過程に貯蔵組織のショ糖リン酸合成酵素活性が強く関与していることを明らかにした。
背景・ねらい
サトウキビのショ糖含量は、茎収量とともにショ糖収量構成要素であり、「品質取引」制度の導入とともに高ショ糖含量(高糖性)の重要性が高まっている。サトウキビのショ糖蓄積には、その合成および分解作用に関与する数種のショ糖蓄積関連酵素が知られているが、どの酵素がショ糖蓄積と深く関連しているかは十分に明らかではない。本研究では、貯蔵ショ糖の分解に関与する酸性インベルターゼおよび貯蔵ショ糖の合成に関与するショ糖リン酸合成酵素に着目して、その活性を測定し、早期高糖性品種のショ糖蓄積特性を検討した。
成果の内容・特徴
- 早期高糖性品種NiF4は、晩熟性のF172に比べ、ショ糖含量の指標となるBrixが夏季から高く推移した。一方、ショ糖の前駆物質である還元糖の含量は、F172では1月まで緩やかに減少したのに対し、NiF4では11月までと早期に減少した。(図1)。
- サトウキビでは貯蔵ショ糖を分解する酸性インベルターゼがショ糖蓄積を抑制することが知られている。しかしながら、ショ糖蓄積が進む登熟期から収穫期(10月~1月)には両品種間の酸性インベルターゼ活性に大きな差異がなく、NiF4の早期高糖性を説明するものではなかった(図2)。
- そこで、圃場で栽培したサトウキビ2品種のショ糖リン酸合成酵素の活性を測定したところ、NiF4は、1月、10月ともF172より活性が高かった(図3)。また、ショ糖リン酸合成酵素活性は、Brixの高い収穫期(1月)で登熟期(10月)より高まった(図3)。
- 登熟要因を温度に限定し、ガラス室内でNiF4を栽培したところ、Brix、ショ糖リン酸合成酵素活性ともに低温区(24°C)で高かった(図4)。登熟を促進する低温条件でショ糖リン酸合成酵素の活性が増大しており、NiF4の早期高糖性には、ショ糖合成に関わるショ糖リン酸合成酵素の活性が強く関与していることを明らかにした。
成果の活用面・留意点
ショ糖リン酸合成酵素の測定を通じた、早期高糖性形質についての多様なサトウキビ遺伝資源の評価により、早期高糖性品種開発のための育種素材の作成が可能となる。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 沖縄支所
- 分類
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研究
- 予算区分
- 経常
- 研究課題
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サトウキビ早期高糖性発現機構の解明・サトウキビ高糖性遺伝子の解析
- 研究期間
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平成3~11年
- 研究担当者
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寺内 方克 ( 沖縄支所 )
松岡 誠 ( 沖縄支所 )
小林 真 ( 沖縄支所 )
中野 寛 ( 沖縄支所 )
小田 俊介 ( 沖縄支所 )
岡本 正弘 ( 沖縄支所 )
- ほか
- 発表論文等
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寺内方克, 松岡 誠, 小林 真, 中野 寛 (1995) サトウキビ糖蓄積関連酵素の活性. 熱帯農業, 第39巻(別号1), (1995).
- 日本語PDF
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1997_15_A3_ja.pdf1.15 MB