汎用小型ドローンから陸稲圃場のイネと雑草を高精度で判別できる

要約

オブジェクトベース画像解析は、画素値の類似したピクセルの集合を1つのセグメントとし、セグメント単位で分類する高解像度画像に適した手法である。同手法を用いて、陸稲圃場のドローン空撮画像を解析することで、イネ・雑草・土壌を高精度で分類でき、圃場内の雑草の空間分布を迅速に把握することで、除草作業の効率化が期待できる。

背景・ねらい

雑草の防除は、ラオスの主要作物である陸稲の生産性向上において重要な課題であり、雑草の早期発見と迅速な除草処理が必要である。その解決策として、ドローンによる圃場の空撮画像を用いた雑草検出が有効であるが、陸稲を対象とした知見は乏しく、農家圃場で活用できる実用的な雑草の検出方法は無い。このため、汎用性の高い小型ドローンでラオスの陸稲試験圃場を撮影した一般的なRGB (Red-Green-Blue)カラー画像から、オブジェクトベース画像解析によって迅速かつ高精度にイネと雑草を判別する手法を開発する。

成果の内容・特徴

  1. ラオスの陸稲試験圃場(畝間25cm×25cm)において、播種後29日目に汎用小型ドローン(DJI Phantom 4)により飛行高度20m(地上解像度1cm)で撮影し、RGBカラー画像から色変換したHSV(Hue-Saturation-Brightness)画像と空間変異を示すテキスチャ(Texture)を計算する。教師データとして、目視判別でRGBカラー画像上からイネ、雑草、土壌の位置情報を収集する。オブジェクト画像解析では、まず画像をSLIC(Simple Linear Iterative Clustering)法で類似する画素値ごとに領域分割(セグメンテーション)を行い、教師データを用いて分類クラス(イネ、雑草、土壌)のセグメント内から統計値を抽出し、それらを説明変数としたランダムフォレスト法で分類する(図1)。
  2. オブジェクトベース画像解析により、ラオスの陸稲栽培地で優占するキク科やマメ科を主とした雑草とイネを90%以上の正答率で分類でき(表1)、それらの空間分布を迅速に把握できる(図2)。
  3. 土壌はHSV画像の色情報のみを使用した場合でも99.0%の再現率で分類できるが、さらにテキスチャ情報を追加することでイネと雑草の分類精度が向上する(表1)。
  4. ドローンから分類したイネ・雑草・土壌の被覆率は除草処理後1、17、34日で異なることから(図3)、除草後の時間経過に従って雑草が繁茂する状況を定量的に把握できる。

成果の活用面・留意点

  1. 雑草の分布情報の迅速推定を通じ、生産農家は圃場内の雑草繁茂状況を早期に把握し、適切な雑草管理(除草処理)を行うための基礎情報として活用できる。
  2. 同手法を応用すれば、実際の除草作業を行わずに画像上から雑草の影響を除去することができ、空撮画像によるイネ生育診断の精度向上と効率化が期待できる。
  3. ドローンの飛行高度を上げると、広域を短時間で撮影できるが、画像の地上解像度は低下し、それにともない分類精度も低下するため、利用目的に合った飛行計画を立案する必要がある。
  4. 形態の類似する雑草種(イネ科雑草など)では分類精度が低下する可能性がある。

具体的データ

  1. 図1 ドローン画像を用いたオブジェクトベース画像解析の処理フロー

    ドローンのRGBカラー画像から計算したHSV画像とTexture画像(空間変量)を使用したオブジェクトベース画像解析の処理方法の流れ。SLIC(Simple Linear Iterative Clustering)法で作成したセグメント内から抽出した統計値をランダムフォレスト分類の入力値として使用する。

     

  2. 図2 ドローン画像をオブジェクトベース画像解析で分類したイネ・雑草・土壌の分布図
    除草処理後の経過日数が異なる処理区(除草処理後1、17、34日)におけるイネと雑草の分布を比較。

     

  3. 表1 ランダムフォレスト分類結果の混同行列

        予測  
        イネ 雑草 土壌 再現率
    (a) HSV (正答率 = 0.901, 値 = 0.900)  
    正解 イネ 82 18 0 0.820
    雑草 11 89 0 0.890
    土壌 1 0 99 0.990
    適合率   0.872 0.832 1.000  
    (b) HSV + Texture (正答率 = 0.910, 値 = 0.906)
    正解 イネ 83 17 0 0.830
    雑草 9 91 0 0.910
    土壌 1 0 99 0.990
    適合率   0.892 0.843 1.000  

    再現率は、正解(同じ行)の中で正解した割合。適合率は、予測(同じ列)の中で正解した割合。F 値は再現率と適合率の調和平均から計算される分類結果の評価尺度。

     

  4. 図3 イネ・雑草・土壌の被覆率の比較

    除草処理後の経過日数(1、17、34日)が異なる処理区間で、イネ・雑草・土壌の被覆率を比較。棒グラフ上の異なるアルファベットは5%水準(Tukey HSD)で有意。 

所属

国際農研 社会科学領域

国際農研 生産環境・畜産領域

分類

研究

国名

ラオス

研究プロジェクト

インドシナ中山間農村における資源の多目的活用・高付加価値化と持続的生産性の向上(農山村資源活用)

プログラム名

高付加価値化

予算区分

交付金 » 農山村資源活用

研究期間

2020年度(2016~2020年度)

研究担当者

川村 健介 ( 社会科学領域 )

科研費研究者番号: 90523746
見える化ID: 1747

浅井 英利 ( 生産環境・畜産領域 )

科研費研究者番号: 30599064

Phongchanmixay Sengthong ( ラオス国立農林研究所 )

ほか
発表論文等

Kawamura K et al. (2020) Plant Production Science, 24(2):198-215 
https://doi.org/10.1080/1343943X.2020.1829490

日本語PDF

2020_C05_A4_ja_0.pdf1.65 MB

2020_C05_A3_ja_0.pdf1.61 MB

English PDF

2020_C05_A4_en.pdf1.53 MB

2020_C05_A3_en.pdf1.53 MB

ポスターPDF

2020_C05_poster.pdf1.1 MB

※ 研究担当者の所属は、研究実施当時のものです。