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766. 2022年の世界の気候

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766. 2022年の世界の気候

先週、日本では30℃近い夏日が記録された都市もありましたが、アジアではミャンマーの45℃、インドの44.5℃、バングラデッシュやタイでの42.8℃、と、軒並み異常な熱波に襲われていたそうです。

4月21日、世界気象機関は、2022年世界気候白書を公表、気候変動が進行し、全ての大陸の社会が異常気象による甚大な被害に襲われており、南極海氷が史上最低値を記録、ヨーロッパの氷河の融解が加速していることを指摘しました。
 

報告書は、大気中の温室効果ガスが史上最高水準に達することで、陸・海洋・大気において地球レベルでの変化をもたらしていることを示しました。過去3年間のラニーニャ現象にもかかわらず、2022年、世界の平均気温は、1850-1900年平均値よりも1.15℃[1.02 to 1.28]高く、史上5~6位の暑さに相当するとされ、2015-2022年は史上最も暑い連続した8年間でした。長期的な観測対象である氷河の厚さは、2021年10月から2022年10月の間にマイナス1.3m変化しました。1970年から30m近く氷河の厚さが失われたことに相当します。ヨーロッパ・アルプスの氷河も、冬の小雪、3月のサハラからの砂雲の飛来、そして5月から9月初頭にかけての熱波によって、記録的な融解を経験しました。スイスでは、2021-2022年の間に6%の氷河を失い、歴史的にはじめて夏の残雪が消え、新たな氷の蓄積が不可能な事態が生じました。7月25日には高度5,184mで零℃が記録され、これは69年間初めての出来事で、5,000m以上の高度で零℃が記録されたのは2度目のことだそうです。モンブランの山頂でも史上最高気温が報告されました。

その他にも2022年は、東アフリカでの大干ばつ、パキスタンでの洪水、中国や欧州での記録破りの熱波が、千万人規模の人々に影響を与え、食料安全保障の懸念を伴い、意図しない移住を引き起こし、数十億ドル相当の喪失と損害コストをもたらしました。

気候変動はまた、樹木の開花時期や、鳥の移動など、自然のリズムにも影響を及ぼしています。報告書は、801年来記録されている日本の桜の開花が近年、気候変動と都市化の影響によって早まっていることに言及しました。とくに、2021年の満開日は3月26日と、1200年以上の歴史で最も早い記録をうちたてました。(ちなみに、今年2023年は3月14日開花、3月22日満開、と、開花・満開ともに平年より9-10日早い結果となりました。)

一方、報告書は、技術の進歩により、再生可能エネルギー等の普及コストは下がってきていいることを指摘し、ツール・知識・解決策がそろう中、温暖化を1.5℃に抑制するための対策ペースを加速させることを呼びかけると同時に、気候危機に最も寄与していない脆弱な国・社会層を対象とした適応・強靭性強化のための大規模投資の必要性を述べました。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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