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529. 2022年4月の世界穀物市況

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529. 2022年4月の世界穀物市況

世界の穀倉地帯であるウクライナ・ロシアで起きている問題により、穀物市場には不確実性が漂っています。世界の食料安全保障にとって、需要・供給に影響を及ぼす主要生産・輸出国の動向をモニタリングすることが極めて重要です。

国連食糧農業機関(FAO)の穀物市況に関する4月の月例報告書は、以下のヘッドラインを挙げています。 

  • ブラジルで干ばつ:トウモロコシ価格の高騰を引き起こしかねないか?
  • カナダの小麦植え付け面積は価格上昇・堅調な需要を受けて7%増加
  • アメリカのメイズ植え付けは2013年来のスローペース、収量へのリスク懸念は時期尚早
  • 中国は新たな収穫前の小麦備蓄のオークションを停止
  • インドの小麦備蓄は戦略的に必要とされる水準よりも十分高く、輸出による農家所得の底上げに期待
  • ロシア・ウクライナ戦争により中東の食料安全保障が危機に瀕している
  • ロシアの小麦には引き続き買い手がいる
  • エジプトの小麦備蓄は危険水域まで下がっている
  • カザフスタンの小麦・粉もの輸出差し止めで中央アジア隣国に痛手
  • ウクライナ・ロシア戦争の下でのオーストラリア輸出への見通し

品種・気象条件・衛星画像による作物成長判断・世界市場をくまなく見越したモニタリングの興味深い事例として、一つ目のタイトルの内容を紹介します。

2021/22シーズンに関しては、ブラジルの トウモロコシは昨年よりも33%増加して1.16億トンと予測されています。収量はヘクタール当たりで5.5トンと、悪かった昨年よりも26%改善しています。ブラジルでは毎年トウモロコシを三期作しています。Safrinha品種がブラジルのトウモロコシ生産の76%を占めますが、現在成長期にあり、5月から8月にかけて収穫される予定です。NASAの最新の衛星画像に基づく根圏土壌水分干ばつ指標マップによると(Root Zone Soil Moisture Drought Indicator map) 、Safrinha種の栽培地域で干ばつが広がっているとの報告がありました。今期は南米モンスーンがラニーニャによって平年よりも早めに訪れ、成長期の最終段階における乾燥条件が収量ポテンシャルを制限しています。とりわけ最大のトウモロコシ生産地域であるマットグロッソ州では、過去17年で最も乾燥した4月となり、雨量は10年平均の70%を下回りました。ブラジルはアメリカ、中国に次ぎ、世界三位のトウモロコシ生産国であり、これからアメリカにおける秋の収穫の端境期において世界市場での主要な供給元となります。ブラジルの収穫の世界市場価格への影響が、世界の農家の行動に如実に影響を与える可能性があります。


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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