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771. 2023年4月 世界食料価格動向

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771. 2023年4月 世界食料価格動向

この3年間、食料サプライチェーンの動向にも影響を及ぼしたCOVID-19ですが、5月5日、世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言を終了すると発表しました。

同じ日、国連食糧農業機関(FAO)は、世界食料価格動向を公表しました。2023年4月の値は平均127.2ポイントで、前月から0.8ポイント(0.6%)と僅かに上昇、一年前の2022年4月につけた値から31.2ポイント(19.7%)低い水準となりました。穀物・乳製品・植物油価格指標が下落し続けているのに対し、全体的な価格指標の上昇は、食肉価格指標の反転と砂糖価格指標の急激な上昇を反映しました。

穀物価格は4月に136.1ポイントの値をつけ、これは3月よりも2.4ポイント(1.7%)下がり、一年前よりも33.5ポイント(19.8%)低い値です。ロシア・オーストラリアからの輸出向け供給能力を反映し、国際小麦価格は2.3%下落し2021年7月来の低い水準となりました。欧州での好調な作付け状況や、4月向けにウクライナ産小麦に対する輸入規制を課したEU諸国からの経由について4月末までに合意されたことも市場の懸念を緩和しました。 世界メイズ価格も南米からの収穫実績および収穫改善予測、ブラジルでの歴史的な産出、などを受け、3.2%下がりました。対照的に、アジア向け輸出によって国際コメ価格は4月に上昇、3月につけた輸出価格の下落を反転させました。

植物油価格指標は4月に130.0ポイントと、前月比で1.8ポイント(1.3%)下落しました。この下落傾向は、パーム油の安定的な価格と、ダイズ・なたね・ヒマワリ油価格の低い見積を反映しました。

乳製品価格指標は前月比で1.7%下落する一方、食肉価格指標は1.3%上昇、後者はアジア諸国による豚肉の輸入増に対し、輸出国における生産コスト増と家畜衛生問題を受けた供給制約による国際価格見積もりの上昇を反映しました。同時に、鶏肉価格は9カ月連続で下落していましたが、アジア諸国の輸入需要増加・多くの地域における鳥インフルエンザのアウトブレークによる供給制約を受け4月に上昇しました。

砂糖価格指標は4月に149.4ポイントと、3月から22.4ポイント(17.6%)上昇、3カ月連続の上昇で2011年10月来の高水準となりました。この上昇はインド・中国における生産見通しの下方修正、タイやEUにおける予想を下回る産出見込みにより、2022・23年シーズンの世界供給が逼迫するという懸念を反映しました。ブラジルでは好調な産出見込みがあるものの、平均以上の降雨による収穫の遅れが価格上昇圧力となりました。国際原油価格の上昇やブラジル通貨レアルの対米ドル上昇も(エタノール原料である)砂糖の世界価格の上昇に貢献しました。

 

一方、ウクライナ産穀物の黒海経由での輸出を保障する黒海穀物イニシアチブの期限が5月18日に迫っています。5月5日の報道によると、ロシアによる延長合意拒否に関する不確実性への懸念から、過去3週間は日に3-4隻の貨物船が穀物を受け取りに来ていたのが、2隻に落ち込んでいるとのことで、注視が必要です。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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