Pick Up

754. 2023年3月 世界食料価格動向

関連プログラム
情報

 

754. 2023年3月 世界食料価格動向 

国連食糧農業機関(FAO)は、4月7日、世界食料価格動向を公表しました。2023年3月の値は平均126.9ポイントで、前月から2.1%、12カ月連続の下落となり、一年前の2022年3月につけた最高値から32.8ポイント(20.5%)低い水準となりました。3月の下落は、穀物・植物油・乳製品価格指標の下落を反映しました。

穀物価格は3月に138.6ポイントの値をつけ、これは2月よりも8.2ポイント(5.6%)下がり、一年前よりも31.6ポイント(18.6%)低い値です。今月の下落は、主要穀物の国際価格の下落を反映しました。国際小麦価格は1%下落、過剰な供給と輸出国の間の競争を反映しました。黒海穀物イニシアチブの延長も価格下落に貢献しました。オーストラリアでの生産、およびEUの作況が好調であるとの予測が、世界的な供給状況への安心感を醸成しました。ロシアからの競争も価格への下方圧力となっています。世界メイズ価格も南米からの収穫改善の予測、ブラジルでの歴史的な産出、黒海穀物イニシアチブの延長などを受け、3月に4.6%下がりました。コメについては、インド・ベトナム・タイなどの主要輸出国の収穫が近いことを織り込んで、コメ価格は3.2%下落しました。

植物油価格指標は3月に131.8ポイントと、前月比で4.1ポイント(3.0%)下落し、1年前に比べて47.7%低い水準となっています。この下落傾向は、ダイズ・なたね・ヒマワリ油に対する国際需要が冷え込んだことが、天候不順等による生産低迷を受けたパーム油の3カ月ぶりの上昇を相殺したことを反映しているようです。


昨年7月12日に締結された国連・ロシア・ウクライナ・トルコ間の黒海穀物イニシアチブは、ウクライナ産穀物の黒海経由輸出を120日間保証するものであり、11月に120日間延長されました。その再延長は、期限ぎりぎりの3月18日に合意されましたが、ロシアが譲らず、今回は60日間のみ有効とされています。報道では、ロシアが、ロシア産穀物や肥料の輸出に関する金融や保険等に関する国際的なロジスティックスで差別を受け、ロシア産穀物や肥料への制裁が課されないという合意が守られていないと主張し、イニシアチブから引き上げることをちらつかせているとも伝えられています。実際に、世界の穀物取引を行う大手穀物メジャーの中には、ロシア産穀物輸出からひきあげることを検討している企業もあると伝えられています。
 

ロシアのウクライナ侵攻による食料サプライチェーン寸断の影響は長期化する可能性もあります。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

 

関連するページ