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855. 2023年8月 世界食料価格動向

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855. 2023年8月 世界食料価格動向

国連食糧農業機関(FAO)は、9月8日、世界食料価格動向を公表しました。2023年8月の値は平均121.4ポイントで、前月から2.6ポイント(2.1%)下落、先月の価格上昇を反転し、2022年3月につけたピーク値よりも38.3ポイント(24.0%)低い水準です。この下落は、乳製品、植物油、肉類、穀類の価格指標下落を反映した一方、砂糖価格指標は緩やかに上昇しました。

穀物価格指標は8月に125.0ポイントと、前月比で0.7%、前年比で14.1%下落しました。国際小麦価格は北半球での主要輸出国における予想以上の収穫を反映し、3.8%下落しました。メイズ価格は7カ月連続で下落し、ブラジルにおける記録的な豊作とアメリカでの収穫が始まったことで供給過多となり、2020年9月以来の低い値を記録しました。対照的に、全てのコメ関連の価格指標は7月にインドが宣言した白米輸出規制に端を発するサプライチェーンの攪乱を反映し、前月比で9.8%上昇し、15年ぶりの高値を付けました。収穫前のタイミングで季節的にひっ迫しているといはいえ、輸出制限がいつまで続くか、また他のコメにも規制が拡がるか否かの不安材料により、関係者が手持ちのストックを手放さず、契約を再交渉するなど、取引量の制限につながっています。

植物油価格指標は7月に一時上昇しましたが、8月には125.8ポイントと前月比で3.1%下落しました。この下落は、パーム油・ヒマワリ油・ダイズ油・なたね油全般の低価格を反映しました。パーム油価格は、東南アジアの主要生産国からの季節的な供給増に対し、世界の輸入需要の落ち込みを受けて若干下落しました。他の植物油に関しても、主要生産国からの供給が順調なところ、それほど輸入需要が高まらない事情があるようです。


8月、砂糖価格指標は148.2ポイントと、前月比で1.3%、前年比で34.1%上昇しました。エルニーニョ現象の砂糖供給への負の影響への懸念が高まっているようです。インドでは、8月の降雨は例年よりも少なく、タイでは長引く乾燥状況が報告され、サトウキビ生産にとって大きな打撃となることが見込まれています。対するブラジルでは、一部地域で大雨が農作業の妨げとなっていますが、現在の収穫が順調なこと、米ドルに対するブラジル・レアル安や低いエタノール価格が、国際砂糖価格の急騰を抑制する要因となっています。

国際的な食料価格は下落傾向にあるようですが、エルニーニョ現象のもとでの異常気象の影響がコメ価格や砂糖価格に反映されてきており、注視が必要です。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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