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780. 黒海穀物イニシアチブの60日間延長
780. 黒海穀物イニシアチブの60日間延長
昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻により、主要穀物生産・輸出国からのサプライチェーン寸断への懸念が、2022年の食料価格高騰をもたらしました。状況打開のため昨年7月に締結された国連・ロシア・ウクライナ・トルコ間の黒海穀物イニシアチブは、ウクライナ産穀物の黒海経由輸出を120日間保証するものであり、11月に120日間延長、その再延長は期限ぎりぎりの3月18日に合意されましたが、ロシアが譲らず、60日間のみ有効となりました。 5月18日の期限が迫る中、ロシアが、ロシア産穀物や肥料の輸出に関する金融や保険等に関する国際的なロジスティックスで差別を受け、ロシア産穀物や肥料への制裁が課されないという合意が守られていないと主張し、イニシアチブから引き上げることをちらつかせているとも伝えられてきました。
国連は、この黒海穀物イニシアチブが締結されたことにより、これまで3000万トンの穀物輸出を可能にしてきたことを評価、期限が5月18日に迫る中、ロシアの説得交渉に動いてきたと伝えられています。特に争点となったのが、黒海を通じてロシア産肥料の世界市場への流通を可能にする肥料原料となるアンモニアのパイプライン(the Togliatti-Odesa ammonia pipeline)の再開でした。
期限前日の5月17日、ロシアが60日間の延長に合意したことが伝えられています。国連は世界にとっての喜ばしいニュースとして歓迎する一方、ロシアが要求していたロシア産農産物・肥料等の輸出にかかわる国際金融・物流などロジスティクスへの実質的な制約についての条件が合意されたのかどうか、不明な点も多いとの報道もあるようです。
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)