現地の動き - Pick Up

現地の動きから検索

  • Pick Up

    559. 世界の農地拡大の動向

    現在、世界の食料生産は史上類を見ない規模で行われていますが、使われる土地の面積は減少傾向に転じました。このことは、自然生態系を回復しつつ、より多くの人々への食料を供給することは可能であるということを意味しています。他方、世界を見渡すと、放牧地拡大のホットスポットが、乾燥・温帯地域から生物多様性・カーボン豊富な熱帯地域にシフトしています。熱帯地域における作物収量・農業生産性の向上は、極めて重要です。
  • Pick Up

    558. 国連食糧農業機関(FAO)食料見通し ―燃料・肥料等の生産・価格への波及効果

    6月9日に公表された国連食糧農業機関(FAO)による食料見通しは、高騰する投入財価格、気候、ウクライナでの戦争に起因する市場不確実性等の要因により、食料市場が逼迫し、食料輸入コストが歴史的に高くなる可能性を指摘しました。食料見通しは、ウクライナ戦争の世界市場への影響、および、燃料・肥料等の生産・価格への波及効果、について特集ページを割いています。とくに投入財価格の高騰は、既に歴史的に高い水準にある食料価格高を長引かせ、輸入国に二重の負荷をもたらしかねないと警鐘をならしました。
  • Pick Up

    557. バイオマスから、バイオ燃料やバイオ化成品製造に必要なグルコースを、効率よく安価に得るための糖化技術の開発

    国際農研とタイ国キングモンクット工科大学トンブリ校(以下、KMUTT)の共同研究グループは、農作物の収穫時や加工時に出てくる茎葉、皮、粕、ならびに生活廃棄物として出てくる食品残渣、繊維廃棄物、紙ゴミなど、セルロースを主体とするバイオマスから、バイオ燃料やバイオ化成品製造に必要なグルコースを、効率よく安価に得るための糖化技術の開発を行っています。今回開発した「微生物糖化法」は、酵素添加を一切必要とせず、微生物培養だけでセルロースをグルコースに変える画期的な技術で、低コスト化が図られることから、廃棄綿繊維など再資源化が進まなかった材料への適用も期待されます。

  • Pick Up

    556.ゲノム予測モデルが明らかにする穀粒中の亜鉛濃度が高い品種の開発に利用できるイネ遺伝資源

    マダガスカルなどでは、主食であるコメに含まれる亜鉛(Zn)濃度は1日の必要量を十分に供給するには低すぎるため、コメを主食とする家庭で、ミネラルが豊富な果物や野菜、肉などを加えて食事を多様化する余裕がない場合には、食事からのZn摂取量が不足し、Zn欠乏症になる危険性があります。その解決には主食であるコメに含まれるZnを増やすというアプローチがあります。このような食用作物の可食部におけるZn濃度を高めるアプローチ(Zn-バイオフォーティフィケーション)は、亜鉛欠乏を緩和するための世界的な育種目標です。国際農研は他機関と共同でゲノム予測モデルにより3000点のイネ遺伝資源のコメZn濃度を予測し、その中のZn濃度が高いドナー(遺伝子提供系統)候補をマダガスカルで、実験的に検証しました。

  • Pick Up

    555. グリーン・リカバリーへの投資

    政府は約二年ぶりに、新型コロナの水際対策で止めていた外国人観光客の入国を6月10日より再開することを決めました。COVID-19が2020年3月11日にパンデミックと宣言された当時から、世界各国はよりよい復興に向け、環境に配慮した回復「グリーン・リカバリー」へのコミットメントを表明してきました。国連開発計画(UNDP)は、グリーン・リカバリーへの投資の必要性についてまとめたサイトを発表しています。一方、COVID-19からの回復への道筋に水を差すように、ロシアによるウクライナ侵攻は、食料・燃料・肥料価格高騰を通じて、食料安全保障を脅かしています。
  • Pick Up

    554. アフリカの農民レベルで整備した水路の機能強化

    サハラ以南のアフリカでは、国内の米消費量の増加に対応するため、アジアや北米からの米の輸入量が年々増加しています。アフリカの米生産量を倍増させるという目標を実現するためには、灌漑可能な低湿地で効率よく、かつ持続的にコメを栽培することが不可欠です。しかし、農民レベルの技術で整備した土水路は、水の流れや降雨により浸食し、水路の機能が低下し、作付けできなくなります。国際農研は、現地の農民が独自の技術で建設し、長期的にメンテナンスできる低コスト水利施設を開発できるマニュアルを作成し、公開しました。
  • Pick Up

    553. 世界海の日

    6月8日は「世界海の日」です。国際社会が直面している海洋に関する課題について世界的な認識を高める機会を作るために制定されました。また、2022年は「零細漁業と養殖の国際年」です。本日のPick Upでは、国際農研の研究成果から水産分野の零細漁業と養殖に関連する国際共同研究を2例紹介いたします。

  • Pick Up

    552. 持続可能な開発報告書2022: SDGs進捗は2年連続で後退

    持続可能な開発報告書2022が刊行され、2年連続でSDGsの進捗が後退したことが示されました。SDG指標の国別ランキングでは日本は163か国中19位でした。
  • Pick Up

    551. 2022年5月 世界食料価格動向-2カ月連続で下落するものの昨年に比べ2-3割高

    国連食糧農業機関(FAO)は、6月3日、世界食料価格動向を公表しました。食料価格指標は、2022年3月に史上最高値を記録したのち、4月/5月と2か月連続で下落したものの、昨年の同時期に比べ、29.2ポイント(22.8%)高水準にとどまっています。今回の下落は食料油価格と乳製品価格指標の下落を反映している一方、穀物・肉価格指標は上昇しました。6月3日はまた、ウクライナ戦争開始から100日目にあたりました。国連機関は、ウクライナへのロシア侵攻を受けた食料安全保障の危機回避に向け、ロシアや関係国との交渉に尽力していると報告しています。

  • Pick Up

    550. 世界環境デー Only One Earth(かけがえのない地球)

    6月5日は世界環境デーです。1972年6月5日からストックホルムで開催された「国連人間環境会議」を記念し、日本の提案を受けて制定されました。今年はちょうど50年目にあたり、6月2、3日にハイレベル会議「ストックホルム+50:すべての人の繁栄のための健全な地球-私たちの責任と機会」が開催されています。
  • Pick Up

    549. 気候変動アクションにおける社会科学の重要性

    気候変動対策のゴールを達成しつつ、人々の生活の質を向上し経済とエコシステムの双方の繁栄を保障する上で、技術的な改善と同時に社会変化が必要とされています。PLOS CLIMATE誌に最近公表された論文は、気候変動アクションにおける社会科学の重要性を強調しました。
  • Pick Up

    548. ロシアのウクライナ侵攻による食料危機を巡る懸念と攻防

    6月に入りましたが、年初以来、ロシアによるウクライナ侵攻など、コロナ禍も収束しきれていない国際社会に様々な試練が訪れています。5月24日世界経済フォーラムは、2022年に起こりうる事について世界トップのエコノミストの意見を取りまとめましたが、その一つにロシアのウクライナ侵攻による小麦・肥料等の価格高騰の波及がもたらす世界食料安全保障の危機があげられました。
  • Pick Up

    547. 栄養価の高い食品の小売価格はコロナ症例数の多い国でより上昇した

    新型コロナウイルスのパンデミックは、世界中で生命や生計を脅かし、食品の価格の変動をもたらしました。今回は、世界の食品の小売価格データからその影響を分析した論文をご紹介します。
  • Pick Up

    546. ウクライナにおける戦争の食料・燃料安全保障への影響

    ロシアのウクライナ侵攻は国際政治と市場を震撼させています。収束のタイミングは不確実なものの、この戦争は国際社会にとり長期的で構造的な影響を及ぼすことは必須です。イギリスのシンクタンク、チャタム・ハウス(Chatham House)は、ウクライナ戦争が供給寸断リスクを連鎖的にもたらすことで引き起こす食料・燃料安全保障への影響について、報告書をまとめました。
  • Pick Up

    545. 大雨・高潮・ハリケーン

    気候変動とともに、熱波・干ばつの他、大雨による大災害の可能性も高まることが予測されています。気象庁と国土交通省は、線状降水帯発生の恐れや内陸地域での高潮警報など、防災情報の伝え方を変えることを発表しました。海を越え大西洋ではハリケーンにアルファベット順の名前をつけますが、昨年に大被害をもたらしたIda(アイダ)が「引退」リスト入りしました。温暖化の下で、異常気象の頻度と強度が増していくことが予測される中、農林水産業は大きなインパクトを受け、食料安全保障にも影響が及ぶ可能性があります。大災害の回避には、早期警戒システムの整備と同時に、気候変動の緩和・適応対策の双方を通じた強靭な社会経済システム・食料システムの構築が必要とされます。
  • Pick Up

    544. 同時・連続的に起こる異常気象のインパクト

    NASAの新たな研究によると、温暖化の進む世界では気候災害について、「降れば土砂降り:Troubles never come singly」という諺(ことわざ)が現実になりつつあります。Environmental Research Letters誌に掲載された研究によると、洪水や熱波が時間・空間的に同時に起こる確率が高まり、不作、森林火災やその他の災害をもたらす可能性を指摘しました。
  • Pick Up

    543. 干ばつリスクに対するプロアクティブなマネジメントの必要性

    2022年5月、国際連合砂漠化対処条約(UNCCD)が発表した報告書(DROUGHT IN NUMBERS 2022)によると、近年、干ばつの頻度と強度が増す傾向が強まり、人間社会だけでなく、全ての生命が依存する生態系システム全体に影響を及ぼしつつあります。危機に対する場当たり的な対応策から、干ばつリスクに対するプロアクティブなマネジメントアプローチが求められ、そのための十分な財政措置・政治的意思に基づく調整・協力が必要となります。
  • Pick Up

    542. ヤムイモの生育促進に共生微生物が寄与―生産性向上に向けた新技術の開発を目指す

    西アフリカで主食、換金作物として生産されるヤムイモは、近年需要が高まり、生産性の向上が求められています。最近の研究により、ヤムイモにはマメ科作物のように窒素固定細菌が共生し、その働きにより植物の生育とイモの生産を促進していることが明らかになりました。これらの研究の成果は、低肥沃土壌でも栽培できるヤムイモ品種や肥培技術の開発に貢献すると考えられ、微生物の力を利用することで、高額な化学肥料の導入コストを抑えたヤムイモ栽培の実現が期待されます。
  • Pick Up

    541. 西アフリカギニアサバンナの重要作物、ヤムイモの性別とイモ収量の関係を解明 ―効率的な栽培法の開発を目指して―

    ホワイトギニアヤムは西アフリカ沿岸地域(ギニアサバンナ)において広く栽培され、この地域の食料需給を支える重要作物です。しかし、栽培に手間がかかることがヤム農家の大きな負担となっていることから、国際農研では収量改善を通じた効率的なヤム栽培技術の開発に取り組んでいます。今回、ナイジェリアの国際熱帯農業研究所との共同研究により、長らく謎であったヤムにおける花の性別とイモ収量の関係を明らかにしました。この成果により、ヤムの花性制御による収量改善の可能性が見えてきました。
  • Pick Up

    540. 気候変動・食料危機・「国際生物多様性の日」

    5月18日、世界気象機関(WMO)は、世界気候の現状に関する報告書2021年版を公表、2021年に気候変動に関する主要4指標 -温室効果ガス濃度、海面上昇、海洋熱、海洋酸性化- のすべてが過去最高値を記録したことを発表しました。5月18日には、また、グテーレス国連事務総長が、気候変動とCOVID-19で既に危機的状況にある世界の食料問題に言及し、ロシアによるウクライナ侵攻で食料安全保障が急激に悪化していることに警鐘を鳴らし、食料危機対応の国際連携の緊急性を訴えました。週末の5月22日は「国際生物多様性の日(International Day for Biological Diversity)」です。 グローバル化した世界において、生物多様性・気候変動・食料栄養安全保障の問題は密接に関わりあっており、国際的連携による解決が求められます。