Pick Up

599. 気候変動モデルの予測を超える熱波の発現

関連プログラム
情報

 

599. 気候変動モデルの予測を超える熱波の発現

この7月は、ラニーニャ現象にもかかわらず、記録的に暑い7月であったようです。ヨーロッパのコペルニクス気候変動サービスは、地表上の気温は史上3番目内、アメリカ海洋大気庁は史上6番目の暑さ、と報告しました。北半球では多くの地域が平均超えし、とくに北米中部・北部やアジアの多くの地域で異常値が観察されましたが、対照的に、ロシア極東地域、アフリカの角からインド南部とインド洋西部に面した地域、西シベリアから中央アジアをカバーする地域、の3地域では平均よりも低い気温が観察されたそうです。それにしても、異常な熱波は強く印象に残ります。

8月4日、Nature誌では、最近世界中を襲う熱波についての論考が発表されました。6月の東京では1870年代の観測以降初めての連日35度を経験し、7月中旬にイギリスでは観測初の40℃超えを記録、一方で熱波による山火事がフランス・スペイン・ギリシャ・ドイツを襲いました。中国でも400都市が熱波を経験しています。
 
気候科学者らは、既にこうした熱波の頻度と強度が増加することを予測していましたが、現実は予想よりも早く起こっているようです。研究者は今年の熱波の分析にとりかかり、今後社会に異常な熱波がどのような影響を与えるかの理解に努めています。

最近の研究によると、2021年6月に北米太平洋岸を襲った熱波が、この地域のこれまでの気温の記録からはありえないスケールで起きた原因は、熱い大気を送り込んだ高気圧システムと通常よりも乾燥した土壌条件が重なり合った結果だそうです。イギリスの熱波については、2年前には気候モデルが40℃超えの可能性は小さいが次の数十年間に起こりうると予測していたそうですが、実際に今年7月に実現してしまいました。論考は、気候変動モデルが予測するよりも実際に早いタイミングで熱波が観察されており、土地利用や灌漑といったモデルに組み込まれていない要因の変化が影響している可能性も指摘する研究者もいるとのことです。

ここ数カ月に観察される事象の衝撃的な特徴といえば、中国、北米、そしてヨーロッパと、世界中の複数個所で熱波が同時進行してきたということです。このような北半球における同時進行の熱波は、1979年から2019年の間に6倍多くなっているとのこと。また、3-4月にインドやパキスタンで見られたように、熱波の来るタイミングが早まっています。

温暖化の進行に対し、気候科学者らは二酸化炭素排出削減と異常高温への適応能力向上を訴えます。論考は、今年の熱波は、各国にとって熱波への脆弱性を思い起こさせる契機になった、と結んでいます。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)