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588. 土水路や畦畔法面の崩落を防ぐ植物根系の土壌緊縛力

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588. 土水路や畦畔法面の崩落を防ぐ植物根系の土壌緊縛力

三大穀物のうち、小麦は生産地と消費地が世界中に分布しているのに対し、コメは90%以上がアジアに偏在しています。また、食用以外にも飼料用などが多くを占めるトウモロコシとは異なり、コメは生産量のほぼ全量が食料です。コメは、アジアの気候や地形に適した作物であり、これまでアジアを中心として増加する人口を支えてきました。生産地での消費が中心で貿易量が少ないため、長年、国際コメ市場は低調でしたが、近年、アジアでの消費減少やアフリカでの需要の増加によって、コメ市場が活発になっています。このような状況の下、アフリカでは生産量が増加する以上に消費量が増加し、 需給ギャップが拡大しています。また、サブサハラ・アフリカ地域では2億1,500 万人以上の人々が栄養不足に直面しています。世界の食物エネルギー供給量に占めるコメの割合は20%で、小麦の19%、トウモロコシの5%を上回っている上に、コメはビタミンB 群および食物繊維の優れた供給源でもあります。コメを主食に動物性食品や豆類を副食とすることで、不可欠なアミノ酸や微量栄養素を総じて摂取することができます。

アジア稲作における技術進歩の中で、灌漑稲作を可能とする水田基盤整備は、最も重要な位置を占めてきました。しかし、水田開発が進められてきたガーナ内陸低湿地では、日常的に生じる激しい降雨や維持管理不足などの理由により、土水路や畦畔が機能を満足に発揮していない状況にあります。この状況を受けて、国際農研はクワメ・エンクルマ科学技術大学(KNUST)と共同で、低コスト水利施設の開発に取り組み、その結果をマニュアル(Manual for Improving Rice Production in Africa - Development of Low Cost Irrigation Facility applicable to Africa -)として公開したところです(Pick Up 554参照)。 

このうち、水田水利施設の地表面を自生植物で被覆する補強技術に関して*1、科学的な根拠を得るために実施したさまざまな試験の中から、土水路や畦畔といった水利施設が「崩壊」する前に、「亀裂」や「崩落」を未然に防止する植物根系の土壌緊縛力を定量的に評価した試験結果を紹介します。

被覆植物の地上部は被覆効果、地下部は土壌緊縛効果と関連することから*2、地上部と地下部の重量比を調べたところ、ギョウギシバやイヌシバと比較して、オキナワミチシバが最も小さい値を示し、地下部の発達を優先させる特性を確認しました。また、この3種の自生種を植栽した場所と裸地に金網カゴを埋設し、3、9、12、15ヶ月後に引き抜く試験では、①土壌を緊縛するまで根系が発達するには植栽後1年以上の期間を要すること、②15ヶ月後には植栽をした場所は裸地に比べて有意に大きく、③草種別では最大値を記録したオキナワミチシバが優位性を示しました。さらに、オキナワミチシバは、根1gあたりの土壌緊縛力は弱いものの、土壌深度0~10cmに多くの根が密生する根群分布によって、引抜強度を大きくさせる強度増強の発生機序を考察しました*3

研究対象地では植物の生長特性に関する情報に乏しいことから、本研究では単植による技術の確立を優先させました。将来的には、主根が深く伸長し複雑な根系層を形成する灌木類との混植によって、土壌を強く緊縛する植栽設計を検討することが、今後の研究展開として重要となると考えられます。


*1  https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2017_b04
*2  https://doi.org/10.11248/nettai.11.53
*3 https://doi.org/10.11408/jsidre.90.I_183

(文責:農村開発領域 團 晴行)