食料・栄養
気候変動、人口増加、地政学的リスクの高まりにより、世界の食料安全保障を取り巻く環境は急速に変化しています。開発途上地域では、干ばつや塩害、病害虫の拡大、水産資源の減少などによる生産基盤の脆弱化に加え、栄養不足や微量栄養素欠乏、食品ロスなどの課題も深刻化しており、食料の安定供給と栄養改善を両立する強靱な食料システムの構築が求められています。
食料・栄養プログラムでは、卓越した科学的成果の創出を基盤として、生産性・持続性・頑強性の向上に資する研究を推進します。気候変動に対応した作物・栽培技術、過酷環境に適応する育種素材、越境性病害虫の持続的防除、畜産・水産分野の技術開発、食品の高付加価値化や保存・加工技術の高度化など、食料システムの多様な局面に関わる研究に取り組みます。また、ゲノム解析、分子生物学、オミクス解析、データ科学などを活用した基盤研究を重視し、新たな現象や原理の発見、革新的な技術シーズや育種素材の創出を目指します。さらに、土壌肥沃度、養分循環、炭素貯留、水資源利用、生物多様性など、作物生産を支える農業生態系サービスにも着目し、環境保全と食料生産の両立に貢献します。
創出された研究成果は、開発途上地域の研究機関、国際機関、大学、企業等との国際共同研究や実証研究を通じて社会実装を進めるとともに、科学的エビデンスに基づく政策形成や技術普及へと展開します。卓越したサイエンスから社会実装までを見据えた研究開発を通じて、地球規模の食料安全保障と栄養改善に貢献し、気候変動下においても持続可能で強靱な農林水産業・食料システムの実現を目指します。
関連するJIRCASの動き
TERRAアフリカプロジェクトワークショップをナイジェリアで開催—再生型農業パッケージの開発・実装に向けて—
CoolRiceプロジェクトキックオフ会合で長谷川理事長が講演
現地の動き
-
Pick Up
1571. 世界のイネ研究を支えるIRRI―日本とともに考える、気候変動下のコメ生産―
日本の食卓に欠かせないコメも、気候変動の影響と無縁ではありません。高温、水不足、病害虫、環境負荷や温室効果ガス排出の低減など、世界の稲作は複数の課題に同時に向き合う必要があります。こうした課題に国際的に取り組んできた研究機関の一つが、フィリピンに本部を置く国際稲研究所(IRRI)です。日本とIRRIは、60年以上にわたり、イネ研究と研究者交流を通じて協力を重ねてきました。
2026年10月には、IRRI、国際農研および農研機構が共同で、「耐暑性イネ生産システムに関する国際戦略フォーラム及びテクニカルワークショップ」を東京都内で開催します。本記事では、IRRIの役割と日本との協力の歩みを紹介するとともに、気候変動下のコメ生産に向けて、今後どのような研究連携が重要になるかを考えます。
-
Pick Up
1570. 暑さからコメを守るには―高温不稔を理解し、耐暑性イネ生産システムをつくる―
近年、日本の年平均気温は長期的に上昇しており、気象庁によると、1990年代以降は高温となる年が頻出しています。気候変動に伴う気温上昇や熱波は、イネの収量や品質にどのような影響を及ぼすのでしょうか。本記事では、高温不稔が起こる仕組みと、耐暑性品種、栽培技術、気候影響評価や将来予測を組み合わせた取組の重要性を紹介します。10月13日・14日には、国際稲研究所(IRRI)、国際農研及び農研機構が共同で開催する国際フォーラム及びテクニカルワークショップにおいて、耐暑性イネ生産システムの構築に向けた研究課題と国際連携の方向性を議論します。