現地の動き

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499. イネいもち病に対する判別システムの普及と利用

糸状菌(カビ)の一種が原因のいもち病は、熱帯から温帯までのイネが栽培される全ての地域で発生します。いもち病害は、単一品種が広域な範囲で、繰り返して利用されること(モノカルチャー)により、その特定の抵抗性を持った品種に感染可能な優占菌レースが発生し、冷害のようなイネの生育時期の低温、肥料の過剰施用等により誘発されます。温帯地域ばかりでなく、アフリカやアジアの熱帯地域でも被害の報告が多くなってきています。特に経済的に貧しい開発途上地域における稲作においては、多様性を生かした品種の育成や栽培方法の開発が、今後重要になってきます。
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498. コメ生産増加およびマラリアの撲滅の同時達成には農業分野と保健分野による協力が必要

マラリアはマラリア原虫をもった蚊に刺されることで感染する病気で、依然として世界で最も重大な感染症の一つです。アフリカの多くの地域では、外来診療所の受診や小児病棟への入院で最も多い理由がマラリアです。一方で、稲はアフリカで最も急速に拡大している作物で、コメ需要の増加予測のもと、多くのアフリカ諸国は生産拡大を目指しています。Lancet Planetary Healthに発表された研究は水稲栽培とマラリア感染の関係性についてメタ分析を行い、コメの生産増加およびマラリアの撲滅という2つの開発目標の同時達成には農業分野と保健分野による協力が必要であることを示しました。
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497. ほとんど分かっていなかったカンボジアの海面小規模漁業を解明する

2022年は零細漁業と養殖の国際年と定められています。小規模な漁業・養殖業従事者の振興のための実態把握は極めて重要です。しかし、漁業管理の基礎データとなる漁獲統計は、途上国においては大規模漁業で漁獲された限られた種類のサンプルデータであることが多く、小規模海面漁業の漁獲量や操業実態はほとんど分かっていません。カンボジアの海面小規模漁業は多くの漁家によって営まれていることから、カンボジア政府の協力を得て、東海大学と国際農研でその実態を分析しました。
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496. 「国際森林の日」と熱帯島嶼における森林利用

一週間後の3月21日は「国際森林の日」です。今年のテーマは「森林と持続的生産・消費」です。森林は単に木材を生産するだけではなく、水土保全や気候変動緩和などの公益的機能を発揮し、果実やキノコなどの非木材林産物を生産する地域住民にとって重要な生活の場でもあります。我々国際農研は、森林のある山地において小規模農家の生業維持と水土保全機能向上の両立につながる持続的資源利用について研究を行っています。
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495. 将来のパンデミックを回避するための食料システムを目指して

2020年に世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症のパンデミックを宣言してから丸二年が経ちます。パンデミックは、非常に大きなコストを伴い、その原因となる人獣共通感染症の発症を抑える予防の方が効果的です。パンデミック・人獣共通感染症の予防には、生物多様性喪失・土地利用変化の最大要因である食料システムのモニタリングが必要となります。

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494. 土地利用の持続性に関する10のファクト

土地利用は、生物多様性保全、気候変動、食料安全保障、貧困削減、持続的なエネルギーなど、様々な側面から持続性に絡んできます。社会―生態学的な土地利用システムに関する知見は、土地利用の問題を持続的に解決する上で重要な役割を果たします。2022年2月、PNAS誌で、文献レビューに基づき、土地利用の持続性に関する10のファクトをとりまとめた論文が公表されました。
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493. 雑穀の日

3月9日は『雑穀の日』です。雑穀はイネ科作物のうち、小さい穎果をつけるヒエ、アワ、キビなどの総称です。今日のPick Upで雑穀について学びましょう。
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492. 農地面積は21世紀に加速度的に拡大

2022年1月、国際誌Nature Foodにて公表された論文は、衛星データを用い、21世紀来、農地面積は加速度的に拡大している事を示しました。新しくできた農地面積の半分は自然の植生や樹木からで、森林減少と自然生息地の劣化を阻止するというSDGs目標15(陸の豊かさも守ろう)との矛盾を示しています。
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491. 肥満と食料システム

先日の3月4日は「世界肥満デー」でした。過体重と肥満は健康へのリスクを抱えている状態を指し、2017年時点で、毎年400万人を超える人々が過体重あるいは肥満を原因として亡くなっていると推計されています。かつては高所得国だけに見られた問題でしたが、近年では低・中所得国でも、とりわけ都市部で増加傾向にあります。過体重・肥満の原因となる食生活をめぐる食料システムの在り方を抜本的に見直す必要性があります。
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490. 野菜研究 ―世界の栄養改善に向けてー

野菜を食べること、栄養素・機能性成分をとることは、健康な生活をおくるうえでとても重要です。本日は、広報JIRCAS最新号から、野菜の遺伝資源を使って栄養改善を図る研究活動の話題を提供します。
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489.トウモロコシからの地球を健康にする物質とは

増え続ける人口を支える作物や家畜のエサ(飼料)の収穫量を増やすためには、土に「窒素肥料」をまく必要がありますが、投与された分の約50%しか植物に吸収されず、残りは農地から汚染水や温室効果ガスの形で放出されています。国際農研の発行する広報JIRCAS最新号から、今回はトウモロコシからの地球を健康にする物質の探索に関する記事を紹介します。
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488. 気候変動による動植物の活動周期と季節のミスマッチ

国連環境計画は、2016年以来、深刻化しつつある環境問題に焦点を当てたFrontiers報告書を発表しています。2022年2月17日に公表されたFrontiers 2022: Noise, Blazes and Mismatchesでは、都市の騒音公害の長期的な精神・健康への負の影響、気候変動によって頻発化する山火事・森林火災、気候変動による動植物の活動周期と季節のミスマッチ、の問題を取り上げています。本日は、動植物の活動周期と季節のミスマッチの話題を取り上げます。
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487. IPCC - 気候変動に強靭な開発の必要性

2022年2月、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第2作業部会(WG2)「 気候変動に対する社会経済及び自然システムの脆弱性、気候変動がもたらす好影響・悪影響、並びに気候変動への適応のオプションについての評価による気候変動適応に関する報告書」が公表されました。報告書は、気候変動・エコシステム劣化や生物多様性喪失・人間社会の結合システム(coupled systems)に着目し、その相互関係から生まれるリスクを分析する一方、気候に強靭な開発(Climate Resilient Development)に向け、適応・緩和とSDGs達成を促進するための政策コミットメント・ガバナンスを提案します。
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486. 国際農研が農研機構と共同で育成したサトウキビ新品種の一般農家への種苗配布が開始

サトウキビは、世界の砂糖の約8割、バイオエタノールの約4割を生産する世界の食料・エネルギー生産にとって重要な資源作物です。日本では、南西諸島の基幹作物として栽培されており、砂糖の国内自給率維持だけでなく、島嶼地域の社会・経済の維持にとっても重要な役割を果たしています。国際農研は農研機構と共同で、サトウキビ野生種との種間交配を利用した日本初の製糖用サトウキビ品種「はるのおうぎ」を育成しました。このたび、この新品種の普及に向けて、鹿児島県熊毛地域と奄美地域の一般農家への種苗配布が令和4年2月から開始されました。
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485. 栄養不良という世界的な課題に取り組む~情報プログラムからの貢献

国際農研では、広報JIRCASという冊子を発行し、国際農研職員の活動を紹介しています。今回は最新号より栄養不良という世界的課題への取り組みについて抜粋し、一部編集した記事を紹介します。詳しい内容は本文をご覧ください。
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484. 持続可能な食料システムにおける漁業と養殖業の役割

世界中の人々にとり、魚介・海藻類は健康な食生活に欠かせず、文化的にも極めて重要です。魚介・海藻類の提供において、小規模な漁業・養殖従業者は大きな役割を果たしています。国連は、食料システム・生業・文化・環境において小規模漁業・養殖従事者が果たす役割に光を当てることによるポジティブな波及効果を期待し、2022年を零細漁業と養殖の国際年(The International Year of Artisanal Fisheries and Aquaculture)と定めました。
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483. アフリカ農業開発のカギとなる土壌管理研究

今年はTICAD 8が控えているように、日本にとってのアフリカ開発指針が議論されますが、他国の動向も気になるところです。この2月に公表されたEUの対アフリカ戦略報告書は、政治的優先分野の一つとしてグリーントランジションを挙げ、その実現には健全な土壌管理を基盤とする強靭で持続的な農業が中心的な役割を果たすことを強調しました。そしてそのような農業モデルの開発には、アフリカの農業気候土壌学的条件に関する深い知識の必要性を訴えています。
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482. アフリカの食料安全保障と栄養の概要

2022年8月に第8回アフリカ開発会議(TICAD)が開催されます。アフリカの発展には、主要な産業である農業は不可欠で、食料安全保障の観点からも非常に重要です。昨年FAOが公表した「Africa – Regional Overview of Food Security and Nutrition 2021」の主要メッセージを紹介し、現状について共有したいと思います。
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481. 持続可能な稲作:気候条件の変化に生産システムを適応させ、環境への影響を低減せよ

気候変動がかつてないスピードで加速する中、各国・各地域が気候変動への適応・緩和策を講じていく必要があります。今回は、先日紹介したFAO報告書「Crops and climate change impact briefs」から、気候変動のリスクにさらされている稲作システムの生産性を向上または維持するために実行可能なベストプラクティスについて紹介します。

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480. 地球環境と100億人の健康のための食料システム

今日、世界では10人に一人が飢えに苦しむ一方、世界的に動物性食品や油脂を多く含む食生活の広まりにより肥満や過体重などに伴う疾病が蔓延するようになっています。こうした食生活を支える食料システムは、農業多様性に欠き、生物多様性の喪失の最大の原因とされ、また人為的な温室効果ガス排出の3分の1に相当する排出を通じて気候変動にも関わっています。近年、食料システムを見直そうという世界的な意識の高まりは、食の健康・環境・経済的なコストを可視化することで、地球と人類の健康によい食生活への行動変容とイノベーションを促すことを目指しています。