Pick Up

794. 持続可能なブルーエコノミーに向けて~世界の海洋の展望~

関連プログラム
情報

 

794. 持続可能なブルーエコノミーに向けて~世界の海洋の展望~

6月8日は世界海洋デーです。

1992年6月8日にカナダがブラジルリオデジャネイロの地球サミットで提案したもので、2009年に国際デーと承認されました。

本日のPick Upでは、『The Economist(エコノミスト)』を発行するエコノミスト・グループのWorld Ocean Initiativeが執筆した『World Ocean Outlook 2023(2023年世界の海洋の展望)』を紹介します。この報告書は、持続可能なブルーエコノミー(海洋経済)に向け、気候変動、生物多様性の損失、環境汚染などの地球規模課題に対処するための解決策と行動の機会に焦点を当てており、その概要を示します。

 

● 気候変動

①    2022年は海洋生態系の破壊を食い止めるための国際的な進展がみられ、2023年も継続が必要(表)。
②    水温上昇と海洋酸性化は、特に貧しい沿岸地域で、養殖と漁業に打撃を与える。また、冷涼な地域では逆に水揚げが増加する可能性。
③    マングローブやその他生態系の復元など、質の高いブルーカーボン・クレジット・プロジェクトは2023年に拡大すると予想。

 

表:海洋生態系の破壊を食い止めるための国際的な動き

2022年の進展

  • 世界貿易機関(WTO)は有害な漁業補助金の一部を禁止することに合意
  • 国連環境総会(UNEA)がプラスチック汚染を禁止する条約の交渉を決定

2023年の予定

  • 国際水域に法的保護を与える公海条約についての合意が期待される
  • プラスチック汚染条約の策定に向けた交渉が進行
  • WTOによる有害な漁業補助金の禁止が発効
  • 2023年に船舶の脱炭素化目標が採択される見込み

 

● 生物多様性の損失

①    海洋生物多様性の保護と回復の進展には、革新的な技術、新しい技術、そして政治的な意思の高まりが含まれており、さらに多くの作業と資金が必要。
②    世界の国際水域の生物多様性を保護するための条約に合意するための国連協議は、2023年も継続。この合意がなければ、『陸と海を守る「30by30」』*を達成することは不可能。
③    国際海底機構(ISA)による国際海域での深海採掘開始の承認についての緊張が続くと予想。

 

*陸と海を守る「30by30」:2030年までに陸と海の30%以上を保全する目標(環境省)
https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/documents…

 

● 環境汚染

①    海洋に流入するプラスチック廃棄物の流れを食い止めるため、循環型プラスチックの構築に向けた取り組みに大規模な投資とソリューションの拡大が必要。
②    プラスチック汚染を終わらせるため、2024年までに国際的な法的拘束力のある条約を結ぶために、国連の協議が継続される予定。
③    その他の化学汚染物質についても、国際的な規制や海洋生物多様性への影響に対する認識の向上などが必要。

 

● 持続可能なブルーエコノミー

①    持続可能なブルーエコノミーへの投資の新しい波(水産養殖、再生可能エネルギー、観光など)に対して、持続可能かつ海洋生態系にダメージを与えないことを保証するための慎重な監視が必要。
②    グリーン燃料への転換が進んでいるが、脱炭素化を加速するために、グリーン燃料の開発・供給が進むとともに、規制の枠組みが必要。
③    海洋エネルギーは、世界の再生可能エネルギー需要を満たすために不可欠な要素。洋上風力発電の容量は加速しているが、潮流エネルギーと波力エネルギーは、規模を拡大するために政策と規制の枠組み、そして大量のプロジェクトが必要。
④    水産食品に対する需要は、主に水産養殖の拡大によって満たされると予測。天然水産物の漁業は緩やかな回復が予想されるが、それを支援するためのさらなる資金が必要。
⑤    水産養殖と漁業はともに、特に温暖な地域において、気候変動による課題が増大。
⑥    持続可能なブルーエコノミーの恩恵を男女が平等に受けることが出来る取り組みの進展が必要。

 

参照:
World Ocean Outlook 2023 -Building on the ocean momentum-
https://impact.economist.com/ocean/sustainable-ocean-economy/world-ocea…

 

(文責:情報広報室 金森紀仁)

関連するページ