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1277. 世界の海洋漁業資源の現状

1277. 世界の海洋漁業資源の現状
海洋漁業の長期的な繁栄と持続可能性を維持することは、生態学的に重要であるだけでなく、社会的、経済的、そして政治的にも重要です。先週、ニースで開催された第3回国連海洋会議(the Third UN Ocean Conference:UNOC3)で発表された国連の新たな報告書によると、現在、世界の水産物資源の35%が持続不可能な方法で漁獲されている一方、効果的な管理が水産資源の回復と長期的な持続可能栄を支えていることを浮き彫りにしました。
国際連合食糧農業機関(FAO)は1970年代初頭から、海洋漁業の生物学的持続可能性と長期的な生産ポテンシャルを評価することの重要性を認識し、FAOの世界漁業・養殖業の現状報告書の一部として、海洋漁業資源の現状に関する最新情報を定期的に提供してきました。
今回の分析では、F以前の評価で使用された約450の集約型資源と比較して、2,570の細分化された資源が評価されました。対象範囲の拡大、データの高解像度化、そして新たな階層化アプローチにより、本分析は、地域社会が水産資源の状態をよりよく理解し、世界規模の政策対話に情報を提供し、水産戦略と海洋生物資源の持続可能な利用に関する議論を促進し、持続可能な開発目標(SDGs)の指標14.4.1(生物学的に持続可能な水準で漁獲されている水産資源の割合を測定する指標)を裏付ける情報を提供します。
報告書によると、 生物学的に持続可能な水準で漁獲されている海洋資源(marine stocks)の割合は、基準年(2021年)において64.5%と推定され、35.5%が過剰漁獲と分類されました。過剰漁獲資源の割合は近年、年間約1%の割合で増加し続けており、効果的な管理を強化することが緊急に必要であることを浮き彫りにしています。
一方、生産量で比較すると、基準年(2021年)の漁業水揚げ量(fishery landings)の約77.2%は生物学的に持続可能な資源に由来すると推定されました。これは、平均して水揚げ量の多い資源はより持続可能な方法で管理されている傾向があり、効果的な管理が水産資源の回復と長期的な持続可能性を支えていることを浮き彫りにしています。
報告書は、不確実性はあるとしつつも、地域・主要魚種による大まかなパターンを明らかにしました。
地域パターン
- 北東太平洋や南西太平洋など、強力な管理システムが導入されている海域では、持続可能性(それぞれ92.7%と85.5%)が他の海域よりも高くなっています。
- 半閉鎖性海域である地中海と黒海、そして南東太平洋は依然として課題に直面しており、近年の大きな進歩にもかかわらず、それぞれの魚類資源の約35.1%と46.4%しか持続可能な形で利用されていないと考えられています。
- 東インド洋では、約72.7%の資源が持続可能な形で利用されていると推定されています。ただし、一部の脆弱な種に関してはデータが入手できないため、資源リストに含まれていない可能性があります。
- 東中部大西洋では、混獲削減(to reduce bycatch)を含む管理努力の結果、魚類資源の33.3%が漁獲不足(underfished)と評価されました。しかし、これらの漁獲不足の資源は、海区全体の水揚げ量のわずか5.9%を占めるに過ぎず、この地域の漁業水揚げ量の持続可能性にはほとんど影響を与えていません。
主要魚種のハイライト
- 申告漁獲量上位10種(カタクチイワシ、スケソウダラ、カツオ、マグロ、サバ、ニシン、キハダマグロ、イワシ、ヨーロッパイワシ、クロホワイティング、大西洋タラ)のうち、資源の60.0%は生物学的に持続可能とみなされました。これは、過剰漁獲されたタラ資源(overfished cod stocks)の数を一部反映していますが、水揚げ量の85.8%は生物学的に持続可能な資源に由来すると推定されました。
- マグロ類およびマグロ類に類似した魚種の状況は、強力な管理措置の効果を示しており、2021年には資源の87.0%が持続可能とみなされ、水揚げ量の99.3%が生物学的に持続可能な資源に由来しています。これは特に、漁業国が地域漁業管理機関を通じて効果的な管理計画を実施したことによるものです。
(参考文献)
Sharma, R., Barange, M., Agostini, V., Barros, P., Gutierrez, N.L., Vasconcellos, M., Fernandez Reguera, D., Tiffay, C., & Levontin, P., eds. 2025. Review of the state of world marine fishery resources – 2025. FAO Fisheries and Aquaculture Technical Paper, No. 721. Rome. FAO. https://doi.org/10.4060/cd5538en
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)