Pick Up
1046. 2024年 世界漁業・養殖業白書
1046. 2024年 世界漁業・養殖業白書
6月7日、食糧農業機関(FAO) 2024年 世界漁業・養殖業白書(FAO The 2024 edition of The State of World Fisheries and Aquaculture (SOFIA))が公表され、世界の漁業・養殖業生産量が記録を更新し、水生動物生産において養殖業が捕獲漁業を初めて上回ったと報告しました。
白書は、2022年、世界の漁業・養殖業の生産量が2億2320万トンと、2020年比で4.4%増加しました。内訳は、水生動物が1億8540万トン、藻類が3780万トンでした。世界の養殖業生産は1億3090万トンに達し、うち9440万トンが水生動物を占め、全水生動物生産の51%を占めました。
今日、少数の国が養殖業を独占しており、生産量上位10か国である、中国・インドネシア・インド・ベトナム・バングラデッシュ・フィリピン・韓国・ノルウェー・エジプト・チリ、が89.8%を占めます。アフリカとアジアの多くの低所得国はポテンシャルを使いこなせておらず、キャパシティビルディングが必要とされています。
養殖業の生産拡大は、食料安全保障・栄養問題の解決に不可欠です。2021年、推計される世界の養殖動物消費は1億6250万トンに達し、この増加は世界人口増加率の倍で、一人当たり年間消費は1961年の9.1㎏から2022年の20.7㎏に倍増しました。すべての養殖生産物のうち、89%が直接消費され、のこりは非食用の魚粉や魚油として消費されたと推計されています。養殖食品は世界で高品質の動物性たんぱくの15%、全たんぱくの6%にくわえ、脂肪酸・ミネラル・ビタミンなどの微量栄養素を供給していると推計されています。持続的な供給を行う必要があります。
世界の捕獲漁業生産は1980年代から安定的に推移し、2022年の生産量は9230万トン、うち内水面漁業が1130万トン、海洋漁業が8100万トンでした。養殖業の成長にもかかわらず、捕獲漁業は引き続き重要であり、持続的な管理が求められます。
2032年までに養殖生産は10%上昇する一方、消費は12%増え一人当たり年間消費量は21.3㎏に達する見込みです。所得増加や都市化による食生活の変化が生産・消費増につながると予測されます。ただしアフリカでの生産は伸びず、一人当たり消費は減少することが見込まれ、水生食品に動物性たんぱくや微量栄養素を依存している国の栄養問題に影を落としかねません。報告書はさらに2050年までに現在の一人当たり消費量20.7㎏を維持するには、現在の生産量の22%増が必要であるとし、持続的な漁業養殖業のためのブルートランスフォーメーションの重要性を強調しました。
(参考文献)
FAO. 2024. The State of World Fisheries and Aquaculture 2024. Blue Transformation in action. Rome.
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)