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139. 国連食糧農業機関 (FAO): 農産物市場白書 2020

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2020年9月23日、国連食糧農業機関 (FAO)は、「農産物市場白書 2020. 農業市場と持続可能な開発:グローバルバリューチェーン・小規模農民・デジタルイノベーション The State of Agricultural Commodity Markets 2020. Agricultural markets and sustainable development: Global value chains, smallholder farmers and digital innovations」を公表しました。

グローバルな農業食料貿易は1995年来拡大をし続け、2018年には1.5兆ドルに到達、とりわけ新興・途上国による輸出が増大し世界全体の3分の1を占めるようになっています。白書は、小規模農民を含む包括的な経済成長と持続可能な開発における世界貿易とマーケットの重要性に言及し、現在のコロナ禍・バッタ大発生・気候変動などのショックに対する強靭性強化の必要性を論じています。デジタル・テクノロジーは市場の機能向上に貢献し、農民による市場アクセスを改善します。食料のeコマースなどのイノベーションは農民・消費者の双方に利益をもたらす可能性がありますが、デジタル革命の恩恵が最貧困層にも届くためには、農業におけるデジタル格差の解消が前提となります。

以下、貿易と市場のトレンドと変化をもたらす要因について幾つか挙げます。

  • 国際農業食料貿易は、技術進歩、都市化、人口・所得増、輸送費低下、貿易政策、輸入関税削減、といった要因に影響を受けます。
  • 2001年から2018年の間、上位・下位中所得国はグローバルな農業食料輸出におけるシェアを25%から36%に拡大しました。
  • 世界農業食料貿易は実質価値で1995年から倍増しましたが、2008年金融危機以後、成長率は鈍化しており、さらにCOVID-19パンデミックにより影響を受けると予測されています。
  • 2008年金融危機と経済不況は農業食料グローバル・バリューチェーンの進化を失速させましたが、COVID-19パンデミックの影響も懸念されています。
  • デジタル・テクノロジーは、農場から食卓に至るフードバリューチェーンの全段階において、効率性を改善し、雇用を創出し、資源のムダを削減する可能性をもたらしています。しかし同時に、技術イノベーションが食料生産・加工・取引・消費のあり方に与える影響を予測することは困難です。
  • 欧州や中央アジア・東アジア・太平洋地域の国々は域内で交易する傾向がありますが、南アジア・ラテンアメリカ-カリブ地域・サブサハラアフリカ・北アメリカ・中東北アフリカは世界的規模で貿易を行っています。サブサハラアフリカとラテンアメリカ-`カリブ地域における農産物輸出の90%が域外向けです。
  • 貿易は、余剰地域から不足地域への食料の動きを通じ、当面の間は世界の食料栄養安全保障に重要な役割を果たしていくでしょう。
  • 地域貿易協定はグローバルなバリューチェーン参加を刺激し、制度・政治改革の契機となりえます。多くの脆弱な国々が世界市場に依存する中、多国間貿易システムの促進が重要な意味を持ちます。

 

参考文献

FAO. 2020. The State of Agricultural Commodity Markets 2020. Agricultural markets and sustainable development: Global value chains, smallholder farmers and digital innovations. Rome, FAO. http://www.fao.org/publications/soco/en/

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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