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国際連合食糧農業機関(FAO)「2018年 世界漁業・養殖業白書[The State of World Fisheries and Aquaculture (SOFIA)]」概要

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2018年世界漁業・養殖業白書によると、2016年から2030年までに世界の漁業・養殖業からの漁獲量は1.71億トンから2億トンへの増加を予測している。1960年代には一人あたり年間10kgであった魚類消費量は2016年には20.3kgに達したが、天然の漁獲量は1990年代より安定的に推移する一方、1980年代以降は養殖が急増する需要を満たすようになった。2016年の漁獲量の内、海洋漁業7930万トン、淡水漁業1160万トンに対し、養殖業は8000万トンであった。養殖部門の年成長率は1990年代に10%であったのが、2010-2016年5.8%となったが、今後数十年は、特にアフリカにおいて成長し続けることが予想されている。フィッシュミールへの活用等による漁獲後のロス・廃棄の削減努力を通じて、魚類食品への需要増へ対応が可能となるであろう。

FAOのモニタリングによると、商業的に利用される主要な魚類のうち、生物学的に非持続的な漁法で漁獲されているのは、40年前は10%であったのが、2015年には33%に達している。先進国が漁法や魚類資源の管理法を改善してきた一方で、途上国における資源賦存を超えた漁獲の傾向―多すぎる船が希少な魚を追いかけていること―に警鐘をならしている。こうした状況の解決には、国際的な政策協調、財政・人的資源の投入、モニタリング分野などでの先進技術の適用、等による対応が求められる。気候変動や海洋汚染も懸念材料である。気候変動は漁業可能な海域を変化させ、北半球温帯地域での漁獲量が増加する一方、熱帯地域の多くの漁業国では漁獲量減少が予測される。漁業の変化は運営・管理・管轄権が大きく関わってくる。また、気候変動に円滑に適応する漁業戦略の研究が必要になる。さらに、海上で廃棄された網等の漁具やペットボトルの破片などのマイクロプラスチックによる汚染が海洋エコシステムに及ぼす被害に対しても、国際的な協調が必要である。

また、白書では世界漁業・養殖についての最新統計が発表されている。最も漁業関係者の多い地域はアジア(全体の85%)であり、最大の漁業生産・輸出国は中国、最大の輸入市場はEU(1位) -米国(2位)-日本(3位)、である。途上国における漁業純輸出収入(370億ドル)は、肉類・タバコ・米・砂糖をあわせた純輸出収入を上回る。

より詳しい内容に関しては、以下の報告書原文を参照のこと

FAO. 2018. The State of World Fisheries and Aquaculture 2018 - Meeting the sustainable development goals. Rome. Licence: CC BY-NC-SA 3.0 IGO http://www.fao.org/3/I9540EN/i9540en.pdf

なお、概要に関する本翻訳は、FAOから公式に承認を受けたものではなく、翻訳上の誤りなどの責任は文責にある。国際農研では、世界、とりわけ途上国地域において、持続的な漁業の確立に貢献するため研究活動を行っています。研究内容に関して詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。

「熱帯域の生態系と調和した水産資源の持続的利用技術の開発」

(文責:研究コーディネーター  飯山みゆき)