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789. エネルギー摂取と季節

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789. エネルギー摂取と季節

私たちは生きていくうえで、エネルギーを体外から取り入れる必要があります。常に必要なエネルギー量を食料から確保できればよいのですが、そうでなければ食料安全保障の1つの要素である「安定性」が脅かされることになります。特に発展途上地域の小規模農家にとって、季節性は食の安定性に影響を及ぼす大きな要因です。自然条件に頼った作物栽培ではどうしても収穫時期が限られてしまいます。収穫直後は食べることができたとしても、生産量不足、在庫不足、食料供給の少ない時期の食料価格高騰などによって、収穫前の時期(lean season)には手に入らなくなってしまうことがあります。

例として、マダガスカル中央高地で、季節性がエネルギー摂取に与える影響を調べた論文(Shiratori et al. 2023)を簡単にご紹介します。アフリカ東部に位置するマダガスカルは栄養不足や貧困が深刻な国です。またコメが主食で、生産・消費ともにコメがその多くを占めています。本論文では水田農家を対象として年3回の調査を行い、24時間思い出し法で収集したデータを基に食事内容を把握し、一人当たりのエネルギー量に換算し、他の要因をコントロールしながらエネルギー供給量への季節性の影響を分析しました。

結果、収穫前の時期(2月)にはエネルギー供給量とエネルギー充足率が有意に減少することが分かりました。さらにエネルギー源をみると、収穫後(6月)には自家生産した食料からのエネルギー供給が69%であったのが収穫前(2月)には44%になり、逆に購入した食料からのエネルギー供給は17%(6月)から46%(2月)になります。収穫前の時期には、農家はコメの消費を減らし代わりにイモ類などの消費を増やす傾向もみられました。収穫から時間が経つにつれ、自家生産から購入へ、コメからイモ類などへとエネルギー源が変化していく様子がみてとれます。

本論文ではエネルギーのみに着目していますが、実は各栄養素の摂取量も季節によって変化します。コメが収穫できたからと言ってコメばかり食べるようになったら、お腹は満たされても栄養バランスは良くならないかもしれません。栄養改善政策を考える上では時季による変化を考慮することも重要だと考えられます。

 

本文は、食料プログラムの研究成果としてJapanese Journal of Agricultural Economicsに、”Seasonal Energy Deficiency of Rural Rice Farmers in Madagascar”と題して発表された論文に加筆したものです。

 

(参考文献)
Sakiko Shiratori, Davaatseren Narmandakh, and Jules Rafalimanantsoa (2023). Japanese Journal of Agricultural Economics, 25:13-16. https://doi.org/10.18480/jjae.25.0_13

 

(文責:情報広報室 白鳥佐紀子)


 

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