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283. WeRise-季節予報を使った天水稲作向け意思決定システム

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お米は世界3大穀物の一つで、世界の半分近くの人口を養う重要な食料です。そのため、SDGsの達成には、おコメの生産量を高めていく必要があります。しかし、熱帯地域のコメ生産地の大半は天水条件であり、単収は灌漑稲の半分ほどです。天水条件とは、稲の生育に必要な水のほとんどを降雨で賄うシステムであり、灌漑システムとは異なり水の管理が困難な栽培環境です。そのため、稲作農家は経験に基づいた勘を頼りに栽培していますが、近年の気候変動の影響で、その勘も頼りにならなくなってきています。天水稲農家の生産を安定化させるための技術が必要となっています。また、天水稲作が行われる地域は、低肥沃な土壌が分布する地域でもあり、土壌の養分供給能、特に窒素の供給能に乏しい土壌です。そのため、高収量を目指すためには、適切な施肥が必要です。施肥をする際には田面水が必須ですが、降雨頼みの天水田では、施肥の時期に田面水が無かったり、或いは施肥の後にスコールに見舞われたりすることもあり、施肥を効果的に行うことは至難の業です。肥料は、天水農家にとって高価であり、一縷の望みを託した基肥一発施肥、もしくは無施肥で栽培するケースが多くみられます。天水田での単収を上げるためには、水と養分供給の問題を克服しなければなりません。

国際農研では、農林水産省による拠出金を通じた国際共同研究事業により2010年から国際稲研究所(本部:フィリピン)とWeRiseに関する開発研究、技術実証を行ってきました。インドネシア国中部スマトラ州、西ヌサテンガラ州およびフィリピン国ターラック州、ヌエバエシハ州、イロイロ州の天水稲作地域でWeRiseの実証試験を行い、その結果をAgriculture誌に公表しました。フィリピンとインドネシアでの実証試験により、WeRiseを用いることで播種時期が最適化できること、施肥利用効率を改善できることが示されました。これにより、天水稲作農家の営農計画改善を行うことが可能となります。

参考文献
https://www.mdpi.com/2077-0472/11/4/346
Hayashi K. et al. Evaluating the predictive accuracy of the weather-rice-nutrient integrated decision system (WeRise) to improve rainfed rice productivity in Southeast Asia. Agriculture (2021). doi.org/10.3390/agriculture11040346

(文責:環境プログラム 林慶一)

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