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783. 4月に観測されたアジアの記録的な高温と気候変動の関係

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783. 4月に観測されたアジアの記録的な高温と気候変動の関係

2023年4月後半、バングラデシュ、インド、タイ、ラオスなど多くの地域で記録的な高温が観測されました。極端現象と気候変動の因果関係を分析するWorld Weather Attributionによると、インド、タイ、フランス、オーストラリア、デンマーク、ドイツ、ケニア、オランダ、アメリカ、イギリスの科学者たちは、高温が観測された4カ国について気候変動による猛暑の発生頻度と強さについて評価しました。

高湿度の熱波は実際の気温よりも暑く感じます。このため、科学者たちは気温と湿度を統合した暑さ指数(単位:℃)を用いて、気候変動が4月の4日間の熱波の発生確率と強度をどのように変化させたかについて分析しました。

 

主な調査結果の中から、気候変動に関連する個所を記載します。

主な調査結果

  • 産業革命以降から約1.2℃温暖化した現在における高温高湿度の現象は、インドとバングラデシュでは頻繁に起きている一方で、タイとラオスでは稀でした。
  • 調査対象となった南アジア地域の大部分で「危険」とされる基準値(41℃)を超えました。また、一部の地域では、体温維持が困難な「極めて危険」な値(54℃以上)に近い値を示しています。
  • 温暖化によって1.2℃上昇した気温が猛暑に与えた影響をするために、気候モデルと観測値を組み合わせて推定したところ、4月に観測されたような高湿度の熱波が発生する確率とその強度は増すことが示されました。
  • 気候変動により、インドとバングラデシュで高温多湿が発生する可能性が少なくとも30倍以上増加しました。同時に、インドとバングラデシュでは5年に1度の熱波によって、温暖化しない場合よりも、暑さ指数で約2℃暑くなっています。
  • タイとラオスでは、湿度の高い熱波(200年に1度)によって、暑さ指数で2.3℃高くなっています。一方で、もし温暖化しなかった場合、熱波は発生しなかったと考えられます。
  • 高温多湿は温暖化によって続くと考えられます。タイとラオスでは、産業革命前より2℃(現在より0.8℃)温暖化すると、熱波の発生確率が約10倍となります。インドとバングラデシュでは、その可能性は約3倍になり、高温多湿の現象が1-2年ごとに予想されます。

研究チームは、高温多湿の気候に対して生理的に弱い人(例:持病、年齢、障害など)や職業柄影響を受けやすい人(例:屋外労働者、農民)は健康リスクが最も高いとも述べています。また、インドでは最も先進的な熱波対策が行われており、自己防衛行動、暑さの早期警告システム、受動的・能動的な冷却、都市計画、熱行動計画などの解決策を実際に実施した地域では、熱波による死亡事故が減少していると報告しています。一方で、こうした解決策は、最も脆弱な人々には届かないことが多く、今後も続く気候変動によって日常生活で大きな不利益を被っている人々への影響を悪化させる可能性が高く、包括的な適応と開発の介入が求められるとしています。

 


(参考文献)
Extreme humid heat in South Asia in April 2023, largely driven by climate change, detrimental to vulnerable and disadvantaged communities (World Weather Attribution)
https://www.worldweatherattribution.org/extreme-humid-heat-in-south-asi…

(文責:情報広報室 金森紀仁)

 

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