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829. 2023年7月世界の気象と2022年アジアの気候

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829. 2023年7月世界の気象と2022年アジアの気候

 

7月27日、国連は、2023年7月は史上最高に暑い月の記録を更新しそうだと発表、地球温暖化(global warming)の時代はおわり、地球沸騰化(global boiling)時代の到来の兆候であると表現しました。世界気象機関によると、まだ7月は終わっていませんが、過去3週間、北半球、とくに北米、南欧、アジアでは人命を脅かす熱波が襲いました。2023年7月6日に最高気温(17.08°C)が観測されましたが、7月3日以降ずっと、これまで日別の最高気温であった2016年8月13日の16.80°C を上回っています。2023年7月の最初の23日間の気温は 16.95°Cと、これまで最も暑い7月であった2019年の16.63°Cの記録を既に上回りました。

また同日、世界気象機関が発表したアジア気候白書(State of the Climate in Asia 2022)は、近年、極端現象や気候変動のインパクトは増していることに言及、とくに今後も農業が大きな影響を受けるとし、強靭な食料システム構築のための気候変動適応の必要性を説きました。 

報告書によると、北極へと拡がるユーラシアの巨大な陸域をカバーするアジアでは、2022年の平均気温は観測史上2位か3位を争う高温となり、1991-2020年平均値よりも0.73℃[0.63℃–0.78℃]高く、1961-1990年平均値(WMOの基準期間)に比べ1.68℃[1.60 ℃–1.74℃]近く高い値をとり、世界平均よりも速いペースで温暖化が進んでいます。

2022年には、アジアで81の気候・気象関係の災害が報告され(うち83%が洪水や台風・嵐に関連)、5000人以上の人命を奪い、5000万人の生活が影響を受け、360億ドルの経済損失を伴いました。

2022年は中国をはじめ多くの国で干ばつが観察され、高山地帯では大量の氷河が融解し、将来の食料・水安全保障への負の影響が懸念されています。対照的に、パキスタンではモンスーン初期の3週間で例年雨量の60%に相当する降雨があり、大洪水が大規模な災害をもたらしました。また、アジアでは海面温度上昇が顕著であり、アラビア海、フィリピン海、日本の東側の海域では10年ごとに0.5℃を超える海水温上昇を観察、世界平均に比べ3倍のスピードで温暖化が進んでいます。

報告書は、今後アジアの多くの地域を襲う極端現象の頻度と強度が増加し、農業が大きな影響を受けると警告します。洪水・干ばつ・台風といった気候変動関連災害による損失と損害の25%が農業関連でした。報告書は食料システムの強靭性強化のための気候変動適応計画の緊急性を説きました。

 

(参考文献)
WMO (2023) State of the Climate in Asia 2022 (WMO-No. 1321) https://library.wmo.int/index.php?lvl=notice_display&id=22328

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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