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854. 2022年の気候と2023年の見通し

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854. 2022年の気候と2023年の見通し

9月6日、アメリカ海洋大気庁は、2022年気候白書を公表、温室効果ガスの大気濃度、海面上昇、海洋熱量など、気候変動に関するの兆候を示す指標の多くが史上最高値を更新したと発表しました。

白書によると、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素といった大気中の温室効果ガス濃度は最高値を記録、産業革命以前よりも50%以上高い水準で、観測史上のみならず、80万年以上さかのぼった古気候学的な記録に照らし合わせても最も高い値となりました。大気中のメタン濃度は産業革命以前よりも165%高い水準を記録し、亜酸化窒素の大気中濃度も近年の排出増を裏付けるように増加しました。地球全体で温暖化トレンドが続き、2022年の気温は1991-2020年平均値よりも0.25-0.30℃高く、1800年代末以来過去最高6位以内に入る高気温で、気温冷却効果があるとされるラニーニャ現象年として最高気温を観測しました。

 

2023年はエルニーニョ現象の影響を受けており、2022年よりもさらに熱くなる可能性が指摘されています。9月6日、世界気象機関(WMO)の発表によると、2023年8月は平均20.98℃と1850-1900年平均値よりも1.5℃近く暑く、史上最も暑い8月で、2023年7月に次ぐ史上2番目に次ぐ暑さであったとし、2023年6-8月と最も暑い月を3か月連続で記録しました。
 

9月7日、気候変動科学に関する情報提供を行う非営利団体のClimate Centralは、2023年6月~8月にかけ、15億人~42億人の人々が気候シフト・インデックス(Climate Shift Index)*のレベル3(気候変動によって3倍起こりやすくなったような異常気象)を超える強度の気候変動の影響下に置かれました。同期間、歴史的に温室効果ガスを殆ど排出してこなかった国々は、G20諸国に比べ、CSIレベル3以上の異常気象に晒される日数が3~4倍高かったと推計されています。

 

グテーレス国連事務総長は「我々の地球は煮え立つ季節 ‘a season of simmering’を耐えている。気候の崩壊 'Climate breakdown'が始まった 」と警鐘を鳴らし、最悪の混乱状態を回避するために温室効果ガス排出削減に向けた努力を加速する必要性を訴えました。
 

*実際人々が住んでいる地域において経験する日々の気温を人為的な気候変動がシフトさせる確率(オッズ)を数量化した指標。CSIは、気候変動がなかった場合に想定される気温分布に対し、実際に観察される気温分布の比率、を表し、マイナス5~ゼロ~プラス5の11段階で示される。例として、異常な熱波が観察された場合、CSIレベル3は気候変動によって3倍起こりやすくなったケース、CSIレベル5は5倍あるいはそれ以上起こりやすくなった例外的なケース、を意味する。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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