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931. 気候変動が2023年に極端気象を激化させ、2024年にさらなる記録更新が予測される

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931. 気候変動が2023年に極端気象を激化させ、2024年にさらなる記録更新が予測される

 

極端現象と気候変動の因果関係を分析するWorld Weather Attributionは、昨年末の12月22日、気候変動が2023年に極端気象を激化させたと結論し、2024年にさらなる記録更新を予測しました。

6カ月連続で最高温度を記録した2023年は観測史上最も暑い年となる見込みです。気温上昇によって、世界各地は今まで経験したことのないような極端気象現象を経験しました。

アフリカの角地域では、数百万人の食料安全保障危機をもたらした干ばつの直後に、大規模な洪水がおきて300人の命を奪いました。両方とも気候変動の影響は明らかです。

8月、欧州・北米・中国を、数週間におよぶ熱波が襲いましたが、人為的な温暖化なしに稀あるいは起こりえない出来事でした。

9月、リビアで豪雨により3つのダムが崩壊し、3400名以上が命を失いました。紛争とダムの不適切な維持が災害の直接的な原因ではありますが、気候変動が豪雨の強度を50%まで引き上げたことが判明しています。

カナダにおける今年の森林火災は観測史上最大の被害をもたらし、これまでの記録を1000万ヘクタール上回る1800万ヘクタールを延焼しました。気候変動による高温・乾燥・強風条件がケベックにおける森林火災を少なくとも2倍起こりやすい状況にしました。

以上は今年観測された災害の一部にすぎません。2023年、WWAは人為的インパクトが甚大で分析に値する120以上の極端現象をレビューし、14の現象について詳しく解析しました。うち、熱波5件、豪雨5件、干ばつ3件、森林火災1件で、地域別では、アフリカ6件、欧州4件、北米2件、南米2件、アジア3件、オーストラリア1件でした(解析の幾つかは複数の地域を対象としました)。

変わりゆく極端現象に関する世界の認識を向上するには、分析対象とする国・大陸のバランスをとる必要がありますが、課題もあります。6月、ルワンダとコンゴ民主共和国において600人近くが犠牲となった洪水をもたらした豪雨の解析を試みましたが、データ不足が足かせとなって気候変動の影響について結論は出せませんでした。このことは、中央アフリカにおいて変わりゆく極端気象を分析する上で、気象モニタリング基地と気候科学への投資の必要性を浮き彫りにしました。

2024年にも熱波が予測されています。人為的な気候変動と自然現象であるエルニーニョによって、2024年は2023年を超えて高温を記録することが予測されています。1.2℃の温暖化で既に数百万人が災害の被害を被っています。化石燃料燃焼による温暖化が進むほど、異常気象の強度と頻度は上昇するとみられています。損失と損害を最小化するには、世界は適応および緩和対策の強化につとめなければなりません。とりわけ脆弱な社会層・貧困層は極端気象のインパクトを大きく受けることになり、気候変動は格差も拡大しています。化石燃料からの離脱と温室効果ガス排出ネットゼロへの移行と同時に、こうした社会層の脆弱性に対応することが、世界平和にとっても重要です。


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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