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1021. 気候変動がアジアの熱波を劇化

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1021. 気候変動がアジアの熱波を劇化

 

4月から5月初頭にかけ、アジアにおいて、西はイスラエル・パレスチナ・レバノン・シリア、東はタイ・ベトナム・フィリピンといった国々を40℃越えの日が続く記録的な熱波が襲いました。熱波はまた、農業部門で生産・収量減といった負のインパクトをもたらす一方、複数の国は数日間の学級閉鎖を余儀なくされ、数百万の学生が教育の機会を失いました。

5月14日、極端現象と気候変動の因果関係を分析するWorld Weather Attribution (WWA)は、気候変動が、4月から5月初頭にかけてアジアの数百万人の人々を襲った熱波を劇化させたと報告しました。

近年、南アジアにおいて、モンスーン入り前の極端な熱波の頻度が増す傾向にあります。これまでもWWAは、2022年インド・パキスタンの乾燥した熱波や2023年インド・バングラデッシュ・ラオス・タイでの湿度を伴った熱波は、気候変動によって30倍確率が高まり、熱の強度も高まったことを報告しています。

産業革命期と比べて人類による経済活動により1.2℃温暖化した今日の気候の下では、今回のような極端な熱波も稀な出来事ではありません。西アジアでは、1年に今回のような熱波が起こる確率は10%、あるいは10年に一度です。フィリピンでも年に10%程度、エルニーニョ現象で10年に1度、エルニーニョ現象でなければ20年に1度と推定されます。南アジア広域では、今回のような4月の高温は比較的稀で、1年に起こる確率は3%、あるいは30年に1度の出来事に匹敵します。

世界が産業革命期比で2℃温暖化した場合、極端な熱波が起こる可能性は、西アジアでは2倍、フィリピンでは5倍になると予想され、気温自体が西アジアで1度、フィリピンで0.7℃高くなると見込まれています。

アジアで過去数年にわたり毎年のように繰り返される熱波及び熱波に伴うインパクトにより、多くの国にとって熱波が深刻な災害であることの認知度が高まり、適切なガイドラインが策定されるようになっています。それだけでなく、熱波に対する緊急救援体制構築に向けた、セクターを超えた連携戦略が必要となるでしょう。

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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