Pick Up

800. 砂漠化および干ばつと闘う世界デー 「彼女の土地、彼女の権利」

関連プログラム
環境 食料 情報

 

800. 砂漠化および干ばつと闘う世界デー 「彼女の土地、彼女の権利」

本日、Pick Upは800記事目となりました。明日の6月17日は、「砂漠化および干ばつと闘う世界デー」です。

砂漠化とは、砂漠化対処条約(UNCCD)において、「乾燥地域、半乾燥地域及び乾燥半湿潤地域における種々の要因(気候の変動及び人間活動を含む。)による土地の劣化」と定義されており、乾燥地における土地劣化を砂漠化と呼んでいます。ここでの砂漠化は、既存の砂漠が拡大することではなく、過剰な耕作や放牧、貧困や政情不安などによって土地の生産性が低下することを指しています。

砂漠化は地球規模の問題であり、生物多様性、環境、貧困、社会経済、持続可能な開発などに深刻な影響を及ぼします。乾燥地はすでに脆弱であり、砂漠化によって、今後10年以内に約5,000万人が避難する可能性があります。砂漠化は人類の歴史の中で重要な役割を果たし、いくつかの大帝国の崩壊と地元住民の強制移住の要因となりました。しかし、今日の耕地劣化のペースは、歴史的な速度の30~35倍であると推定されています。約20億人が乾燥地の生態系に依存しており、その90%が発展途上地域に住んでいます。 それらの地域では、人口増加に対応するため乾燥地で農業を営んでおり、わずかに生産性の高い地域では、過放牧によって土地が枯渇し、地下水は過剰に汲み上げられています。

「砂漠化および干ばつと闘う世界デー」は、砂漠化と戦う国際的な取り組みを広く知ってもらうため、1995年1月10日に国際連合によって定められ、毎年、砂漠化や干ばつに対する様々な取組が報告されています。昨年は、「干ばつからともに立ち上がる」というテーマの下、人類と地球の生態系への悲惨な結果を回避するための早期行動の必要性が強調されました。

今年は「彼女の土地、彼女の権利」がテーマです。女性は土地の健全において、極めて重要な役割を担っていますが、それを管理できないことがあります。女性は土地の権利において大きな障壁に直面しており、多くの地域では、依然として権利を妨げる差別的な法律や慣行があります。その結果、土地の劣化によって水不足が生じると、女性が最も深刻な影響を受けることがあります。このことから、国際連合は、女性が平等に土地とその関連資産にアクセスするための努力が、女性と人類の未来への直接投資となることを強調しており、女性が土地回復と干ばつから回復する取り組みの最前線に立つ時が来たと呼びかけています。

 

国際農研では、これまでに、砂漠化に対処する持続的土地管理技術として、西アフリカで土地劣化の主要因である土壌侵食の抑制と作物収量の増加を両立する「耕地内休閑システム」、ウズベキスタンでカットドレーンを用いた塩類化対策など様々な技術開発を行って来ました。また、モンゴルでは異常気象に対する経営リスクや草地劣化リスクを低減する牧畜技術の開発も行いました。

Ikazaki et al. (2011) https://doi.org/10.1080/00380768.2011.593155
Okuda et al. (2020) https://doi.org/10.3390/w12113207
Oniki et al. (2018) https://doi.org/10.1016/j.rama.2018.02.003

 

そして、2021年4月からの持続的土地管理プロジェクトでは、インド共和国において土壌塩類化が深刻であるヒンドゥスタン流域を対象に、農家が営農活動の一環として取り組める低コストの灌漑排水技術による塩類化対策の開発を進めています。

持続的土地管理プロジェクト https://www.jircas.go.jp/ja/program/proa

 

また、アフリカ畑作システムプロジェクトでは、西アフリカのブルキナファソを対象に、これまでに開発した「耕地内休閑システム」などの持続的土地管理技術を広く普及するための土壌保全促進スキームの開発と干ばつに強い土壌・作物管理技術の開発を進めています。

アフリカ畑作システムプロジェクト https://www.jircas.go.jp/ja/program/prob

 

(文責:農村開発領域 大西純也)

 

関連するページ