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560. 砂漠化および干ばつと闘う世界デー 「干ばつからともに立ち上がる」

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560. 砂漠化および干ばつと闘う世界デー「干ばつからともに立ち上がる」

砂漠化および干ばつと闘う世界デーは、砂漠化と戦う国際的な取り組みを広く知ってもらうため、毎年6月17日に開催されています。砂漠化とは、世界の土地面積の3分の1以上を占め、世界人口の40%近くが居住する乾燥地での土地の劣化で、主に人間活動と気候変動によって引き起こされます。実は、この砂漠化は既存の砂漠が拡大することではありません。過剰な耕作や放牧、不適切な灌漑、森林伐採だけでなく、貧困や政情不安で土地の生産性が低下することを砂漠化と呼びます。

土地が劣化して生産性が低下すると、温室効果ガスの排出量が増加し、生物多様性が減少します。また、新型コロナウイルスなどの感染症がまん延しやすくなり、私達は、より干ばつ、洪水、砂嵐にもさらされるようになります。このため、砂漠化対処条約(UNCCD)事務局は世界中の人々に対して、土地を限られた貴重な自然資本として扱い、パンデミックからの回復過程においてその健康を優先し、国連生態系回復の10年*の期間中に土地の回復を強く推進するよう呼びかけています。

* 2021年から2030年を「国連生態系回復の10年(UN Decade on Ecosystem Restoration)とすることが、2019年3月の国連総会で定められました。

今年は「干ばつからともに立ち上がる」をテーマに、人類と地球の生態系が悲惨な結果になることを回避するための早期行動の必要性が強調されています。干ばつは持続可能な開発への脅威ですが、開発途上国だけでなく先進国でもより深刻になってきています。干ばつは過去20年間と比較して29%も増加しており(WMO 2021)、現在23億人以上がすでに水不足に直面していることを考えると、非常に深刻な問題です。2050年までに干ばつは世界人口の4分の3以上に影響を与える可能性があると推定されており、ほとんどの国がその影響を受けることになります。

 

国際農研では、これまでに、砂漠化に対処する持続的土地管理技術として、西アフリカで土地劣化の主要因である土壌侵食の抑制と作物収量の増加を両立する「耕地内休閑システム」、ウズベキスタンでカットドレーンを用いた塩類化対策など様々な技術開発を行って来ました。また、モンゴルでは異常気象に対する経営リスクや草地劣化リスクを低減する牧畜技術の開発も行いました。

そして、2021年4月からスタートした持続的土地管理プロジェクトでは、インド共和国において土壌塩類化が深刻であるヒンドゥスタン流域を対象に、農家が営農活動の一環として取り組める低コストの灌漑排水技術による塩類化対策の開発を進めています。

また、アフリカ畑作システムプロジェクトでは、西アフリカのブルキナファソを対象に、これまでに開発した「耕地内休閑システム」などの持続的土地管理技術を広く普及するための土壌保全促進スキームの開発と干ばつに強い土壌・作物管理技術の開発を進めています。

(文責:大西純也、伊ヶ崎健大)
 

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