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574. 報告書「2022 年世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」:健康な食生活を享受するための食料・農業政策の見直しを

7月6日、5つの国連機関(FAO, IFAD, UNICEF, WFP, WHO)によって公表される「世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)2022年版」が発行されました。栄養不足蔓延率(PoU)は、2019‐2020年の間に8.0%から9.3%に悪化したのち、減速はしたものの2021年に9.8%まで上昇、7.02億人 – 8.28億人が飢餓の影響下にあると推計されました。一方、インフレにより、2020年、31億人の人々が健康な食生活を享受しなかったとされ、報告書は健康な食生活を入手可能にするための政策の見直しを訴えました。

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573. 生物多様性の国際的枠組みをめぐる動向

生物多様性保全を目指す国際的枠組みが議論される予定であった国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)は、コロナ禍で何度か延期の憂き目にあってきましたが、ようやく12月に開催地を代えて実施されることが発表されました。国際的な合意の成功は、科学的アプローチで自然破壊をもたらす直接・間接的な要因をつきとめ、それらの背後にある我々人類の行動を抜本的に見直すことにかかっています。
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572. 高温不稔を軽減するイネ早朝開花性の利用

イネは開花時に高温に対する感受性が最も高く、35℃以上の高温に1時間でもさらされると、受精ができず不稔(空籾)が発生することが知られています。国際農研では、開花時の高温を避けるため、朝早く涼しい時間に花を咲かせようというユニークな発想に基づき、それを可能にする早朝開花性(EMF; early morning flowering)の研究を進めています。
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571. 異常気象と気候変動の因果関係

6月下旬の日本では暑い日が続きましたが、気象庁は東・西日本の各地と東北南部では記録的に早く梅雨明けしたとの速報見込みを発表しています。今年に入り世界各地でも熱波が報告されていますが、とくに、3月以降インド・パキスタンおよび南アジアの大部分の地域を覆った熱波は、人為的に引き起こされた気候変動により確率が30倍高まったという推計も報告されています。近年、異常気象と気候変動との因果関係を迅速に推計する手法が改善しています。Environmental Research Climate誌に発表されたレビュー論文は世界的に見て熱波と気候変動との関係は明らかな傾向があるとしました。
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570. 気候変動とグリーンウォーター

Earth's Future誌に公表された論文は、2050年までに世界の農地面積の80%以上で、農業用水の不足が悪化するとの見通しを報告しました。将来の温暖化における水不足の影響を緩和するには、小規模なため池の設置などを通じ、農地において降雨により直接農地にもたらされ土壌中に貯留されるグリーンウォーターの利用を向上させる必要があります。

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569. 持続可能な小規模漁業を人類と地球のために

南アフリカ共和国、プレトリア大学のシェリル・L・ヘンドリクス教授は、2022年6月23日号のネーチャー誌に「持続可能な小規模漁業を人類と地球のために」のタイトルで論評を寄稿しました。また、6月29日、国連食糧農業機関(FAO)は、 2022年 世界漁業・養殖業白書(SOFIA)を公表しました。
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568. 国際熱帯デー:“熱研”の遺伝資源と島嶼環境を活用した取り組み

6月29日は国連で制定された国際熱帯デー(International Day of the Tropics)です。熱帯地域は、世界の総表面積の40%を占め、世界の生物多様性の約80%と、多様な言語・文化の大部分を占めています。熱帯地域は近年、大きな経済発展を遂げていますが、それに伴う人口増や都市化に気候変動も加わり、自然環境・生態系の悪化や生物多様性の急激な減少等の課題に直面しています。熱帯地域の豊かな自然環境と多様な生物資源は、地球の共通の財産として守っていく必要があります。

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567. 野菜・果物のサプライチェーンに革新を

野菜や果物は人々や地球の健康に有益です。しかし、食品ロスやフードマイレージ、気候変動といった課題にも直面しています。今回はNature Food誌の論説を取り上げます。
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566. 海氷溶解と転換点

グリーンランドや北極海の海氷融解は、永久凍土の融解、南極氷床の融解、アマゾン森林破壊、とならび、気候変動議論において、地球が次第に不可逆性を伴うような大規模な変化を伴う転換点の一つとされています。地球の緊急事態に陥る危機を回避するには、科学に基づき温室効果ガス排出を抑制していくためのアクションと社会変化が喫緊に必要とされます。
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565. FAO- ITUによる報告書「サブサハラ・アフリカのデジタル農業の現状」

国連食糧農業機関(FAO)と国際電気通信連合(ITU)は、サブサハラ・アフリカのデジタル農業の現状を調査し、報告書としてまとめました。国別の分析から得られた知見を、今後のアクションのための提案とともに紹介しています。
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564. 世界各地で報告される熱波

世界気象機関(WMO)によると、ここのところ、北米から欧州まで世界各地が熱波に覆われ、夏至以前の時点で既に7月か8月の気温に達しているケースも報告されています。早急な緩和・適応策が必要となります。
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563. 低土壌肥沃度耐性に関連するイネの遺伝子領域を発見

マダガスカルの主食はコメであり、一人当たりのコメ消費量は世界でトップクラスですが、さらに増加しています。しかしこの国では、イネは主に小規模農家によって肥沃度の低い土壌で栽培され、化学肥料は殆ど投入されていません。その結果、コメの収量は伸び悩み、国レベルでコメの生産量と消費量のギャップが拡大しています。そこで、国際農研では国際稲研究所(IRRI)のジーンバンクから導入した遺伝資源を評価し、現地の栽培条件下でコメの収量向上に利用できる低肥沃度耐性に関連するドナー(遺伝子提供系統)と遺伝子領域を同定しました。

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562. パラグアイで開発したダイズさび病抵抗性新品種の特性

大豆の大生産地である南米、特に熱帯・亜熱帯地域において、ダイズさび病は大豆生産に深刻な影響を及ぼしています。抵抗性品種を活用したさび病対策のため、国際農研はパラグアイのNikkei-Cetaparとともにダイズさび病抵抗性新品種JFNC 1、JFNC 2を開発・リリースしました。本研究では、これら新品種が改良前の品種と比較してさび病抵抗性や収量性がどの程度向上しているかを調べました。その結果、新品種は高度なさび抵抗性が付与され、さび病発生圃場で殺菌剤を使用しない場合の収量性は改良前の品種からJFNC 1、JFNC 2はそれぞれ1.7倍、1.4倍に向上していることがわかりました。現地では殺菌剤耐性のさび病菌により生産コストや環境負荷が増大しているので、これら新品種の導入効果が期待できます。

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561. FAO「食の安全の未来を考える」予測報告書を出版

FAOは、予測報告書「食の安全の未来を考える」を出版しました。食の安全はアグリ・フードシステムの要であり、すべての関係者は、気候変動や人口増加、天然資源の枯渇など、複数の課題に対応しながらも、今後発生しうる脅威、混乱、課題を乗り切るため準備を行う必要があります。本報告書は、食の安全、ひいては消費者の健康、経済、国際貿易にまで影響を与えるような要因やそれに関連する傾向を記しています。
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560. 砂漠化および干ばつと闘う世界デー 「干ばつからともに立ち上がる」

砂漠化および干ばつと闘う世界デーは、砂漠化と戦う国際的な取り組みを広く知ってもらうため、毎年6月17日に開催されています。砂漠化とは、世界の土地面積の3分の1以上を占め、世界人口の40%近くが居住する乾燥地での土地の劣化で、主に人間活動と気候変動によって引き起こされます。実は、この砂漠化は既存の砂漠が拡大することではありません。過剰な耕作や放牧、不適切な灌漑、森林伐採だけでなく、貧困や政情不安で土地の生産性が低下することを砂漠化と呼びます。
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559. 世界の農地拡大の動向

現在、世界の食料生産は史上類を見ない規模で行われていますが、使われる土地の面積は減少傾向に転じました。このことは、自然生態系を回復しつつ、より多くの人々への食料を供給することは可能であるということを意味しています。他方、世界を見渡すと、放牧地拡大のホットスポットが、乾燥・温帯地域から生物多様性・カーボン豊富な熱帯地域にシフトしています。熱帯地域における作物収量・農業生産性の向上は、極めて重要です。
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558. 国連食糧農業機関(FAO)食料見通し ―燃料・肥料等の生産・価格への波及効果

6月9日に公表された国連食糧農業機関(FAO)による食料見通しは、高騰する投入財価格、気候、ウクライナでの戦争に起因する市場不確実性等の要因により、食料市場が逼迫し、食料輸入コストが歴史的に高くなる可能性を指摘しました。食料見通しは、ウクライナ戦争の世界市場への影響、および、燃料・肥料等の生産・価格への波及効果、について特集ページを割いています。とくに投入財価格の高騰は、既に歴史的に高い水準にある食料価格高を長引かせ、輸入国に二重の負荷をもたらしかねないと警鐘をならしました。
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557. バイオマスから、バイオ燃料やバイオ化成品製造に必要なグルコースを、効率よく安価に得るための糖化技術の開発

国際農研とタイ国キングモンクット工科大学トンブリ校(以下、KMUTT)の共同研究グループは、農作物の収穫時や加工時に出てくる茎葉、皮、粕、ならびに生活廃棄物として出てくる食品残渣、繊維廃棄物、紙ゴミなど、セルロースを主体とするバイオマスから、バイオ燃料やバイオ化成品製造に必要なグルコースを、効率よく安価に得るための糖化技術の開発を行っています。今回開発した「微生物糖化法」は、酵素添加を一切必要とせず、微生物培養だけでセルロースをグルコースに変える画期的な技術で、低コスト化が図られることから、廃棄綿繊維など再資源化が進まなかった材料への適用も期待されます。

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556.ゲノム予測モデルが明らかにする穀粒中の亜鉛濃度が高い品種の開発に利用できるイネ遺伝資源

マダガスカルなどでは、主食であるコメに含まれる亜鉛(Zn)濃度は1日の必要量を十分に供給するには低すぎるため、コメを主食とする家庭で、ミネラルが豊富な果物や野菜、肉などを加えて食事を多様化する余裕がない場合には、食事からのZn摂取量が不足し、Zn欠乏症になる危険性があります。その解決には主食であるコメに含まれるZnを増やすというアプローチがあります。このような食用作物の可食部におけるZn濃度を高めるアプローチ(Zn-バイオフォーティフィケーション)は、亜鉛欠乏を緩和するための世界的な育種目標です。国際農研は他機関と共同でゲノム予測モデルにより3000点のイネ遺伝資源のコメZn濃度を予測し、その中のZn濃度が高いドナー(遺伝子提供系統)候補をマダガスカルで、実験的に検証しました。

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555. グリーン・リカバリーへの投資

政府は約二年ぶりに、新型コロナの水際対策で止めていた外国人観光客の入国を6月10日より再開することを決めました。COVID-19が2020年3月11日にパンデミックと宣言された当時から、世界各国はよりよい復興に向け、環境に配慮した回復「グリーン・リカバリー」へのコミットメントを表明してきました。国連開発計画(UNDP)は、グリーン・リカバリーへの投資の必要性についてまとめたサイトを発表しています。一方、COVID-19からの回復への道筋に水を差すように、ロシアによるウクライナ侵攻は、食料・燃料・肥料価格高騰を通じて、食料安全保障を脅かしています。