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526. 野生種の持続的な利用に向けて

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526. 野生種の持続的な利用に向けて

我々の身の回りに無意識的に日常的に使用している製品の中には、野生の植物種を原料として使用しているものが多くあります。たとえば洗面所にある化粧品には、アフリカのセネガルからウガンダにかけて生育するシアバター、やはりアフリカ原産で太い幹が特徴的なバオバブ、モロッカンオイルとしても知られるアルガンオイル、等を原料に含んでいるかもしれません。また香水やアロマには、しばし乳香とも呼ばれるアフリカ北東部や中東原産のフランキンセンスが使われています。

国連食糧農業機関(FAO)が公表したレポートは、我々が日常使用する製品にひっそり使われている野生種のうち、とりわけ12種(‘wild dozen’)に着目し、野生種の取引に伴うリスクと機会を評価しました。

近年、野生種の原料への世界的需要が高まっており、とりわけ先進国では健康志向の高まりにより機能性のある野生種を使用したサプリメント商品が人気を博しています。過去20年間で価値にして75%増加したとの推計もあります。数千の種が、生存圏の喪失や気候変動・過当搾取によって絶滅の危機に瀕しています。同時に、こうした野生種の持続的な利用は、世界の最も脆弱な人々の収入源となり、食料安全保障と生活の維持に欠かせません。こうした種を保全することは、包括的で強靭かつ持続的な食料システムと経済の構築にとって不可欠です。

報告書は、野生種の取引にかかわる全ての人々の認識を高めることで、責任ある消費と生産を通じ、保全に繋がっていくことに期待しています。

(参考文献)
Schindler, C., Heral, E., Drinkwater, E., Timoshyna, A., Muir, G., Walter, S., Leaman, D.J. and Schippmann, U. 2022. Wild check – Assessing risks and opportunities of trade in wild plant ingredients. Rome, FAO. https://doi.org/10.4060/cb9267en

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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