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266. 持続的な養殖業の発展に向けて

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日本、またアジアの国々の食と栄養にとり、持続的な水産業の発展は極めて重要です。そして持続的な水産業発展において、養殖業の役割が年々重要になってきました。

2021年3月にNature誌にて公表された論文によると、2017年、80Mt以上の魚・貝類と32Mtの海藻類など合わせて約425種に及ぶ多様な種の養殖がおこなわれたと推計されています。 論文は、過去20年間の学術論文のレビューに基づき、世界の養殖業の成熟に伴う三つの重要なトレンドとして、内水面養殖セクターの規模・バリューチェーンの発展、魚の栄養・品種・野生の魚の消費を減らす代替飼料の開発などにおける進展、二枚貝や海藻養殖の拡大による食・産業・エコシステムサービス提供可能性の発掘、を挙げました。

これらのトレンドは、養殖業がグローバルフードシステムにより統合されたことを示唆しています。養殖業の発展を通じ、低所得国から高所得国にわたり、消費者は一年中タンパク質と微量栄養素に富んだ水産物を入手できるようになりました。こうした進展の一方、養殖業セクターは、ビジネスや社会の期待にも応えるべく持続的なアウトカムを達成しなければなりませんが、まだまだ多くの課題があります。

近年とりわけサケとエビに関し、飼料と繁殖に関する知見の向 上により、陸上養殖システムが発展してきました。エビは国際的にも取引される産品ですが、持続的で安定的なエビ養殖システムの確立には、エビ類の生殖機構の解明や繁殖技術の開発がさらに必要とされています。

国際農研・水産領域のマーシー・ニコル・ワイルダー プロジェクトリーダーとそのチームは、エビ養殖産業の安定化を図るため、30年以上にわたりエビ類の生理化学的研究と養殖技術開発への応用研究を行い、基礎研究により得られた知見を実用化の段階まで応用・普及を図ってきました。

この度、ワイルダー プロジェクトリーダーが、令和2年度日本水産学会賞を受賞しました。研究成果は「有用エビ類の生殖・脱皮・浸透圧調節に関する生理生化学的研究と新養殖技術開発への展開」です。本賞は、学術研究上特別に優れた業績を上げ、水産学の発展に寄与した者に授与されます。


参考文献

Naylor, R.L., Hardy, R.W., Buschmann, A.H. et al. A 20-year retrospective review of global aquaculture. Nature 591, 551–563 (2021). https://doi.org/10.1038/s41586-021-03308-6

(文責:水産領域 マーシー・ワイルダー)