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438. 持続的な稲作栽培に向けて集約化

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コメは世界の半分の人口の主食となっており、摂取カロリーは21%を占めます。その消費は今後も増え続けると予測されております。しかしながら、その収量増加は世界各地で停滞が見られ、コメ生産には大量の水、肥料、農薬が用いられ、温室効果ガスの発生源なっており、環境への負荷が懸念されております。今後、環境への負荷を最小限に抑えながら、より多くのコメを生産するには、稲作生産に関する研究開発をどのように方向付けるかが重要になっていきます。

今回Nature Communications誌で報告された研究論文は、今後数十年において環境への悪影響を最小限に抑えながら、コメの供給を十分に確保するために、国レベルおよび世界規模の収量ギャップ(達成可能収量と現在の収量の差)と資源利用効率(水、農薬、窒素、労働力、エネルギーなど)に関する重要な戦略的洞察を提供しています。著者らは世界の稲面積の半分をカバーする32の稲作作付体系で、収量ギャップと資源利用効率の評価を行いました。その評価結果では、高収量と高資源利用効率を達成することは、相反する目標ではないことを示しており、ほとんどの作付体系には収量、資源利用効率、またはその両方を向上させる余地があることがわかりました。さらに、収量ギャップが大きいか、資源利用効率が低い比較的少数の作付体系の改善に焦点を当てることにより、全体として、コメ生産量32%増加させ、過剰な窒素を減らせる可能性がわかりました。一方で、サブサハラアフリカの諸国や東南アジアの国々では十分な窒素施肥量が与えられていない作付体系が存在し、窒素施肥技術の改善が収量増加に貢献すると期待されています。

国際農研はサブサハラアフリカの持続的な稲作栽培に向けて同地域の栽培環境に適した効果的なイネ施肥技術に関する研究を行っており、環境への負荷を最小限に抑えながら、より多くのコメを生産する技術の開発が進められています。

参考文献

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  • RIMG8178.JPGRIMG8147.JPGPress release & blog post NCOMMS paper_c

(文責:AfricaRice/社会科学領域 齋藤和樹)
 

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