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832. 鉄過剰ストレスにより発生するイネの葉の可視障害の軽減にマグネシウムの施肥が有効であることを発見

アジアやアフリカの多くの水田地域で発生する鉄過剰ストレスは、イネの生育や収量に悪影響を及ぼすことが古くから認識されています。しかし、その耐性の鍵となる要因の多くは明らかとなっていません。鉄過剰ストレスが引き起こす応答のひとつに、葉の褐変症状(ブロンジング)があります。国際農研は、マダガスカルの鉄過剰ストレス圃場における圃場試験と国内における温室実験から、植物の必須元素のひとつであるマグネシウムの施肥が、ブロンジングを軽減させるのに有効であることを明らかにするとともに、そのメカニズムを示唆しました。ミネラル間のバランスが鉄過剰ストレス耐性に重要であり、イネの鉄過剰ストレス耐性育種を進めるうえで重要なヒントになると期待されます。
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831. 持続的な食料システム構築に向けたアクション

先週ローマで開催された「国連食料システムサミット2年後会合(UNFSS+2)」に合わせ、グテーレス国連事務総長は、持続的な食料システム構築のために、①飢餓撲滅に向けた投資増強、②企業・政府間の協調推進、③食料生産による環境・気候への負の影響緩和、の3つの分野でのアクションを提案しました。
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830. 世界食料市場をとりまく不確実性

この7月、ロシアが黒海穀物イニシアチブを離脱したことで、ロシア・ウクライナからの食料供給寸断について不確実性が高まっています。両国は小麦・メイズ・ヒマワリ油といった穀物の主要生産・輸出国であり、こうした世界食料価格の動向が気になるところです。ここのところ、もう一つの主要主食作物であるコメについても、世界第一の輸出国であるインドが輸出規制を課したと伝えられています。地政学的要因や主要輸出国の動向、異常気象の影響、そしてそれらに対する輸出国・輸入国の反応が、世界食料価格および世界食料安全保障に大きな影響を及ぼします。
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829. 2023年7月世界の気象と2022年アジアの気候

7月27日、国連は2023年7月は史上最高に暑い月の記録を更新しそうだと発表、地球温暖化の時代はおわり、地球沸騰化の到来の兆候であると表現しました。また同日、世界気象機関が発表したアジア気候白書(State of the Climate in Asia 2022)は、近年、極端現象や気候変動のインパクトは増していることに言及、今後も農業がとくに大きな影響を受けるとし、強靭な食料システム構築のための気候変動適応の緊急性を説きました。
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828. ツマジロクサヨトウに対する殺虫剤感受性簡易検定法の開発

トウモロコシなどを加害する世界的な越境性害虫であるツマジロクサヨトウは、高い移動能力を持つため、その管理には近隣諸国による国際協力が不可欠です。タイ農業局植物保護研究開発部と国際農研は、ツマジロクサヨトウの殺虫剤感受性の変化を東南アジア等の各国で評価し情報共有するための簡易検定法とタイにおける検定結果に関する論文を公表しました。
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827. 2023年7月-気候変動がなければ起こりえない強度での熱波発生

この7月、世界各地で過去最高気温が更新されており、7月16日、アメリカはデスバレー、中国は北西部で、気温は50℃を超えました。7月25日、極端現象と気候変動の因果関係を分析するWorld Weather Attributionは、気候変動のもとで、2023年7月に北米・南欧・中国で観察されているような極端な熱波が起こりやすくなっていることを報告しました。
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826. 気候変動と気候正義

気候変動の影響は、温室効果ガス排出源となっている国や地域にとどまらず、これまで殆ど排出をしてこなかった後発開発国・地域、いわゆるグローバルサウス、も負の影響を大きく被ります。最近公表された論文は、今日経済的に繁栄している国々の私的な富は、世界の包括的な富を借り入れる(Climate Wealth Borrowing)結果成立してきたと主張、温室効果ガス排出の責任の所在を歴史的に遡って評価する必要性を訴えました。別の論文は、気候変動の責任論は、規範的・倫理的な概念から、具体的なコンテクストにおける実践に比重を置くべきであると提案しています。
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825. 国連食料システムサミット第一回ストックテーキングモーメント・サイドイベント

2021年9月、国連食料システムサミットが開催されました。その後2年に1度、ストックテーキングのための会合が開催されることとなり、その第1回となる「国連食料システムサミット2年後会合(UNFSS+2)」が、イタリア・ローマの国連食糧農業機関(FAO)本部にて本日7月24日から3日間開催されます。日本の農林水産省および国際農研は、7月24日、UNFSS+2の公式サイドイベントを開催します。
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824. 食料生産とエコシステム

ロシアのウクライナ侵攻といった地政学要因や、連日の熱波が示す異常気象が、食料安全保障に不確実性をもたらしています。こんなときだからこそ、食料生産基盤の強化につながるエコシステム回復の必要性について検討する必要があります。
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823. 2023年世界多次元貧困指数(MPI)報告書

国連開発計画(UNDP)とオックスフォード貧困・人間開発イニシアチブ(OPHI)は2023年世界多次元貧困指数(global multidimensional poverty index: MPI)報告書を公表しました。
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822. ロシアの黒海穀物イニシアチブ離脱

昨年7月に締結されて以来、過去1年間、黒海穀物イニシアチブは、3度の延長を経ながら、世界の食料安全保障にも貢献してきました。しかしクリミア大橋への攻撃が報じられた7月17日、ロシアが穀物合意から離脱することが伝えられ、食料価格上昇の懸念を再燃させる危険もあります。
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821. 世界各地で災害級の熱波

ここのところ、北半球で、かつてない強度の熱波が、人々の健康、生態系、経済、農業、エネルギー・水供給に被害をもたらしています。そんな中、アメリカのジョン・ケリー気候問題担当大統領特使が中国・北京を訪問し、世界の2大排出国が気候変動対策協調のための交渉を再開することが伝えられています。未曽有の高温記録更新ペースが、大国を気候変動対策に動かすか、世界が注目しています。
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820. 報告書「2023年世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」:飢餓人口は依然としてコロナ前をはるかに上回っている

7月12日、国連機関(FAO, IFAD, UNICEF, WFP, WHO)による「世界の食料安全保障と栄養の現状(The State of Food Security and Nutrition in the World Report: SOFI)」の2023年版が公表されました。今年の報告書では都市化に焦点をあてています。
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819. 世界の飢餓の現状と見通し

国連食糧農業機関(FAO)と国連世界食糧計画(WFP)が共同で公表した飢餓ホットスポット(Hunger hotspots)早期警告報告書によると、2023年6~11月の期間、世界で22か国、18の飢餓ホットスポットが生じ、対象地域の人々が深刻な食料不安に直面する恐れがあります。そして7月12日に国連機関により公表された「世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)2023年版」は、2022年、7.83億人が飢餓に直面していたと推計、COVID-19パンデミック前の2019年に比べて飢餓人口が1.22億人増加しました。
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818. フィチン酸が多いイネ種子を使うことで、初期生育を改善できる

近年、ウクライナ情勢やコロナ感染症の影響に加えて、肥料の原材料となるリン鉱石の枯渇が懸念されており、リン肥料の価格高騰が続いています。国際農研が研究対象とする熱帯の開発途上地域では、リンが不足する風化土壌が広がっていますが、経済的な理由から十分なリン肥料を購入・使用することができません。そのため、国際農研ではリン欠乏を克服するための様々な研究に取り組んできました。この度、種子におけるリンの貯蔵庫としての役割を果たすフィチン酸の量が異なる種子を用いて、イネの初期生育を調査した結果、リンが欠乏する土壌だけでなく、リンが豊富に存在する土壌においても、フィチン酸量が多い種子を使うことで、イネの初期生育を改善できることを明らかにしました。
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817. 2023年・世界人口デー

7月11日は世界人口デーです。食料栄養安全保障を維持しつつ、国際開発問題と気候変動対策を検討する上で、将来の人口水準がとりうるパターンや各国各地域の人口動態を理解することは極めて重要です。
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816. 2023年6月 世界食料価格動向 

国連食糧農業機関(FAO)は、7月7日、世界食料価格動向を公表しました。2023年6月の値は平均122.3ポイントで、前月から1.7ポイント(1.4%)下落、2022年3月につけた史上最高値から37.4ポイント(23.4%)低い水準となりました。6月の下落は、砂糖・植物油・穀物・乳製品価格指標の大幅な下落を反映する一方、食肉価格は殆ど変動しませんでした。
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815. 地理的に差別化した肥料戦略の必要性

地政学的な紛争や供給寸断は、相互に連環しあう燃料・肥料・食料危機に対する我々の脆弱性を再認識させる契機となっています。窒素肥料価格の急騰は食料安全保障を脅かしますが、過剰使用の国と過少使用の国とでは対応策も異なるはずです。6月29日にNature Sustainability誌で公表された論文は、窒素肥料不足地域に窒素肥料供給を優先し、窒素肥料過剰使用国ではバランスのとれた肥料使用を追求する必要を提起しました。
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814. 黒海穀物イニシアチブ延長に向けた攻防

ウクライナ産作物の輸出を保障することで世界食料危機の回避に貢献してきた黒海穀物イニシアチブは、7月17日の再延長期限が迫る中、ロシアが合意延長拒否の姿勢を示し、EUや国連が仲介に動いていると伝えられています。交渉の決裂は、世界食料価格上昇の懸念を再燃させかねない中、関係者によるギリギリの調整が続いているようです。
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813. エルニーニョ現象の兆候

7月4日、世界気象機関(WMO)は、エルニーニョ現象の兆候が見られると宣言しました。エルニーニョ現象自身は自然現象ですが、人為的に引き起こされた気候変動コンテクストのもと、記録的な高温や異常気象パターンを伴う可能性が懸念されています。