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830. 世界食料市場をとりまく不確実性

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830. 世界食料市場をとりまく不確実性

 

この7月、ロシアが黒海穀物イニシアチブを離脱したことで、ロシア・ウクライナからの食料供給寸断について不確実性が高まっています。両国は小麦・メイズ・ヒマワリ油といった穀物の主要生産・輸出国であり、こうした世界食料価格の動向が気になるところです。

ここのところ、もう一つの主要主食作物であるコメについても、世界一の輸出国であるインドが7月20日にバスマティ米以外のコメの輸出を制限すると発表したと伝えられています。

7月25日、国際食料政策研究所(IFPRI)のブログは、輸出規制が世界コメ市場への供給寸断・価格上昇といった影響の波及を通じ、世界食料安全保障を脅かすことについて懸念を表明しました。

昨年2月末にロシア・ウクライナ戦争が始まった後に他の穀物価格が急騰した際、国際コメ価格は当初落ち着きを見せていましたが、2022年9月以降は15-20%程度上昇していました。インド政府は、2022年10月以来30%上昇してきた国内コメ価格を抑制することを目的としていますが、対象となるコメがインドのコメ輸出の75-80%に相当するということで、国際コメ市場に直ちに影響をもたらすことが懸念されています。

インドは世界の最大のコメ輸出国で、近年、世界コメ市場の40%を占めています。コメは世界でも最も消費される穀物の一つで、多くの国、特にアジアやアフリカの一部の国のカロリー消費の大きなシェアを占めます。今回の輸出規制措置は、既にロシア・ウクライナ問題で不確実性に直面している食料輸入国に大きな影響をもたらす可能性があります。

IFPRIは、今回のインドの輸出規制が国際コメ価格に影響を及ぼすかどうかについて、輸出規制措置がどの程度長引くか、エル・ニーニョ現象や正のインド洋ダイポールモード現象が南アジア・東南アジア地域のモンスーン雨季を弱めてコメ減産をどの程度引き起こすか、そしてインドの行動が他のコメ輸出国に波及するかどうか、といった複合的な要因にかかっていると述べました。

 

地政学的要因や主要輸出国の動向、異常気象の影響、そしてそれらに対する輸出国・輸入国の反応が、世界食料価格および世界食料安全保障に大きな影響を及ぼします。2008年の食料価格高騰に端を発した世界食料危機では、穀物輸入に依存する開発途上地域において買い占めや買い溜め騒動が起こり、政情不安が悪化しました。これら諸国での食料価格急騰には、地政学的要因や異常気象の影響のみならず、世界貿易における主要輸出国の対応や政策発動のタイミングも寄与したと指摘されています。実際、とりわけ価格急騰が著しかったコメに関しては、小麦世界価格の上昇を受け、国内でのコメ需要逼迫に直面したベトナムとインド政府が2007年10月に輸出制限を行ったことを発端として数か国が追随し、フィリピンやナイジェリアを皮切りに多くのコメ輸入国で買い占め・買い溜めが起こったとされています。今回に関しても、様々な不確実性要因が重なる中、世界食料サプライチェーンの寸断を招かないよう、国際社会が協調していくことが求められます。

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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