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965. 紅海・黒海・パナマ運河 - 世界貿易サプライチェーンのアキレス腱をとりまく不確実性

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965.  紅海・黒海・パナマ運河 - 世界貿易サプライチェーンのアキレス腱をとりまく不確実性

 

国際連合貿易開発会議(UNCTAD)は、昨年来の紅海における船舶への攻撃、黒海輸送をめぐる地政学的緊張、そしてパナマ運河への気候変動の影響と、複合的な危機が世界貿易サプライチェーン寸断による経済への影響をエスカレートしかねないとの懸念を表明しました。

世界の物流の80%が海路経由とされています。スエズ運河に向けた輸送船に対する武装組織フーシ派による船舶への攻撃が、航路の妨げとなり、地政学的な緊張を高めています。UNCTADによると、紅海は2023年の世界海運コンテナ貿易の22%を占めていたとされますが、2024年2月前半までに586隻の船舶が迂回を決定し、スエズ運河経由の貨物は82%落ち込んだと推計しました。スエズ運河が通れなくなることで、アジアと欧州間の輸送は迂回を迫られ、輸送時間・費用ともに大幅に負担が増えます。

緊張が続いているウクライナ・黒海を取り巻く情勢によって、既に原油・穀物貿易ルートは大幅な変更を余儀なくされていました。一方、世界貿易の動脈の一つであるパナマ運河も、深刻な干ばつに直面し、水位が大幅に下がり、ピーク時に比べて1月までに取引量が49%減少、さらに減ることが見込まれています。気候変動による運河への長期的な影響が、世界貿易に及ぼすインパクトへの懸念が高まっています。

紅海での危機に直面し、海運業の主要なプレイヤーの中にはスエズ運河航路を停止した企業もおり、コンテナ船の航行は67%落ち込み、タンカーやガス輸送船の航行も大きな落ち込みを経験しています。一方で輸送費は上昇しており、12月初旬来1月末までに、上海と欧州間のコンテナ輸送費は256%上昇、またスエズ運河を経由しないにもかかわらず上海からアメリカ西海岸への輸送費も上昇しました。保険料も急騰し、輸送コストを引き上げています。さらに、スエズ運河・パナマ運河を回避した船は、迂回にかかる時間を取り戻そうとスピードをあげるため、マイルあたりより多くの燃料を使用し、結果二酸化炭素の排出も多くなって環境への悪影響の懸念も高まります。

現在の貨物費は、COVID-19危機の際のピークに比べまだ半分程度ではありますが、時間差で価格転嫁されて消費者に影響を及ぼすことが予想されます。

今回の危機は、世界食料価格にも影響を及ぼすことが想定されます。穀物輸送の寸断は、食料輸入依存の途上国の食料安全保障にとって死活問題です。

UNCTADは、今回の危機が、世界貿易が地政学的な緊張や気候変動による問題に極めて脆弱であることを示したとし、ショックに脆弱な国々の支援を含む持続的な解決策に向けた国際協調を呼びかけました。

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)


 

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