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828. ツマジロクサヨトウに対する殺虫剤感受性簡易検定法の開発

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828. ツマジロクサヨトウに対する殺虫剤感受性簡易検定法の開発

 

ツマジロクサヨトウは、最近、アジアに侵入し、分布範囲を急速に拡大している越境性害虫です。この害虫は、高い移動分散能力を持つため、ある地域で殺虫剤に対する抵抗性を獲得した系統が出現すると、近隣諸国に急速に拡散する可能性が高いと考えられます。従って、ツマジロクサヨトウの殺虫剤抵抗性の発達を抑制するためには、その感受性の変化を各国でモニタリングし、その結果を速やかに共有して共同で対策を立てるための国際ネットワークが必要です。感受性の変化を簡便に比較するためには、モニタリングを実施する全機関が同じ方法で評価実験を実施することが肝要です。そこで、タイ農業局傘下の植物保護研究開発部と国際農研は、農研機構植物防疫研究部門の助言を得て、開発途上地域を含む東南アジア各国等で比較的容易に入手できる材料のみを用いた人工飼料と、その飼料を用いた簡易な殺虫剤感受性検定法を開発し、論文として公表しました。加えて、本論文では、タイの複数のトウモロコシ産地から採集したツマジロクサヨトウの個体群を用いて感受性検定を行ったところ、既に数種類の殺虫剤で感受性が低下している可能性が示唆されたことも報告しています。

今後は、本研究で開発された方法を用いて、インドシナ半島を中心とする東南アジア等におけるツマジロクサヨトウの殺虫剤感受性モニタリングネットワーク構築に向けた活動を継続します。加えて、抵抗性系統の出現が示唆された場合の対策や抵抗性系統の出現を抑制するための持続的な防除技術に関する研究を行います。

 

(参考文献)
Thirawut et al, CABI Agriculture and Bioscience (2023) 4:19. DOI: 10.1186/s43170-023-00160-8

 

関連するページ
・30. 越境性病害虫と国際植物防疫年 - ツマジロクサヨトウ(fall armyworm)
https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20200508
・272.「農業のコロナウイルス」とも評されるツマジロクサヨトウ
https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20210409
・361. プロジェクト紹介:生態に基づく越境性害虫の環境調和型防除体系の構築
https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20210820
・655.インドシナ半島を中心とするツマジロクサヨトウの殺虫剤感受性モニタリングネットワーク構築に向けて
https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20221110

 

(文責:生産環境・畜産領域 小堀陽一)

 

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