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655.インドシナ半島を中心とするツマジロクサヨトウの殺虫剤感受性モニタリングネットワーク構築に向けて

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655.インドシナ半島を中心とするツマジロクサヨトウの殺虫剤感受性モニタリングネットワーク構築に向けて

ツマジロクサヨトウは、一晩で100km以上もの飛翔による自力移動が可能と考えられている、重要な越境性害虫です。これまでにも、関連するページに挙げたPick up記事や「越境性害虫プロジェクトの紹介」等で、その生態や防除の重要性について取り上げてきました。

害虫を防除するために特定の殺虫剤を連用することなどにより、その殺虫剤に対して抵抗性を獲得した新たな系統が出現することがあります。ツマジロクサヨトウのように長距離移動が可能な害虫の場合、抵抗性を獲得した系統が出現すると、その系統は、出現した国のみに留まらず、速やかに近隣諸国に拡散する可能性が高いと考えられます。従って、本種の殺虫剤抵抗性系統の拡散を抑制するためには、各国において殺虫剤に対する感受性の変化をモニタリングし、その結果を近隣諸国で共有するともに、感受性の低下がみられた場合には、速やかに対策を講じるための国際的なネットワークが必要です。

各国が実施する感受性評価結果を簡単かつ定量的に比較するためには、可能な限り同じ方法で評価試験を実施する必要があります。そこで国際農研では、タイ農業局と共同で、農研機構植物防疫研究部門の助言を得て、インドシナ半島各国において同条件で実施できる可能性が高い殺虫剤感受性評価法を開発しました。また、令和4年10月25日から10月28日にかけて、ミャンマー農業局の研究者をタイ農業局に招へいし、開発した殺虫剤感受性評価法を習得して頂くとともに、同国においてこの方法を用いた殺虫剤感受性のモニタリングが実施できる可能性が高いことを確認しました。国際農研では、今後も、インドシナ半島を中心とするツマジロクサヨトウの殺虫剤感受性モニタリングネットワーク構築に向けた活動を継続するとともに、抵抗性系統の出現が示唆された場合の具体的な対策についても研究を続けます。

関連するページ
・30. 越境性病害虫と国際植物防疫年 - ツマジロクサヨトウ(fall armyworm)
https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20200508

・272.「農業のコロナウイルス」とも評されるツマジロクサヨトウ
https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20210409

・361. プロジェクト紹介:生態に基づく越境性害虫の環境調和型防除体系の構築
https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20210820

(文責:生産環境・畜産領域 小堀陽一)

 

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