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272.「農業のコロナウイルス」とも評されるツマジロクサヨトウ

 

ツマジロクサヨトウは、南北アメリカに分布する害虫でしたが、2016年までにアフリカ、2018年までにアジアに侵入するなど、その分布域を急速に拡大しています。トウモロコシ・ソルガム・イネ・サトウキビに加え、80種類以上の農作物を加害しますが、特にトウモロコシ類を選好することが知られています。


ツマジロクサヨトウの被害については、肉・穀類について日本の主要の食料貿易相手の一つであるオーストラリアのニュースでも取り上げられています[1]。この記事によると、現地の農家は、ツマジロクサヨトウを「農業のコロナウイルス」だと比喩するとともに、「オーストラリアの農業にとって過去最大の脅威である」と評価しています。また、「本種の研究が必要で、そのための資金を迅速に投入すべきだ」とも述べています。オーストラリア在住の別の農家は、ツマジロクサヨトウを防除するための殺虫剤の費用として、週当たり数千ドルを投入しているものの、その効果は限定的である、と述べています。同記事では、本種の被害は飼料不足による畜産・酪農への影響も含めて甚大であり、食料価格が上昇する恐れがある、としています。一方、微生物を利用したツマジロクサヨトウの防除技術開発の現状についても紹介しています。


国際農研では、越境性病害虫に関する研究の重要性を示す例として本種に着目し[2]、アフリカにおけるツマジロクサヨトウ対策のための研究に関する国際会議に参加するなど[3]、情報収集を続けてきました。加えて、ツマジロクサヨトウが最近侵入した東南アジアにおける研究ニーズ調査を行いました[4]。令和3年4月1日から開始された第5期中長期計画では、これまでの情報収集の成果をもとに、東南アジアを主な対象と、ツマジロクサヨトウの環境調和型防除技術を開発するための研究を実施します。本研究により、ツマジロクサヨトウの被害が軽減することが期待されます。

[1] https://www.abc.net.au/news/2021-02-27/fall-armyworm-tearing-its-way-th…
[2] https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20200508
[3] https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20181101
[4] https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20191025
(文責: 生産環境・畜産領域 小堀陽一)