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824. 食料生産とエコシステム

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824. 食料生産強化とエコシステム回復

 

ロシアのウクライナ侵攻といった地政学要因や、連日の熱波が示す異常気象が、食料安全保障に不確実性をもたらしています。こんなときだからこそ、食料生産基盤の強化につながるエコシステム回復の必要性について検討する必要があります。

7月20日に国連環境計画(UNEP)が世界経済フォーラムに寄せた論説を紹介します。

森林、湿地帯、河川といったエコシステムは、食料生産に欠かせない水・家畜・送粉者等を供給するだけでなく、気候変動への闘いにおいても重要な役割を果たしています。にもかかわらず、世界中で生態系の劣化は危機的なペースで進行し、100万種が絶滅の危機に直面し、農業部門も莫大な経済損失を被っています。欧州の例を挙げると、土壌浸食は全農地面積の7%に影響を及ぼし、生産性喪失による農家の負担は12.5億ユーロに上るとされます。

非持続的な土地利用慣行によって、地球システムは攪乱し、80億人の世界人口を養うことが困難になりつつあります。エコシステムの回復は、農業生産性の改善のみならず、世界食料安全保障にも貢献します。論説は、人類がエコシステムを回復しながら生産を増強しうる、3つの方法を提案しています。

 

土壌を蘇生せよ(Revive the soil)

世界の可耕地の80%が、乾燥・植生喪失・塩害化・土壌炭素の喪失、のうち、少なくとも一つの劣化圧力にさらされています。土壌浸食だけでも世界の農地の5分の1に影響を及ぼしています。土壌劣化は、世界人口の40%に相当する32億人に影響をおよぼし、今後、世界の食料生産性を12%低下させ、2040年までに食料価格を30%程上昇させることが予測されています。土壌肥沃度の回復の方法として、連作、有機物の施用、最小耕起あるいは不耕起などの栽培方法など、複数が知られています。

 

羽音を取り戻せ(Bring back the buzz)

ハチは世界で最も優秀な送粉者であり、食料生産にとって欠かせません。世界食料の90%に相当する100の作物の70%が、ハチによって受粉するといわれています。現在、危機にされされているハチを保護することで、農業も環境に善いものになります。

 

作物を多様化せよ(Diversify crops)

世界には人類の食となる作物が5万種以上あるとされますが、そのうちコメ、トウモロコシ、小麦の3種類のみが世界人口のエネルギー摂取必要量の50%を占めています。ごくわずかな作物の品種に依存することで、世界の食料システムは病害虫や気候変動に脆弱になるだけでなく、翻って食料安全保障を維持することも困難になります。逆に、持続的な農業を採用し、野菜、果物、多様な作物の生産を重視することで、生物多様性の回復だけでなく、気候変動への適応、強靭性の向上、より健康な食生活へのシフトを可能にします。

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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