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836. 気候変動への適応能力

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836. 気候変動への適応能力

先日のPick Upで紹介したように、2023年夏は、世界人口の81%に相当する65億人の人々が気候変動の影響を受けたとされます。世界各地で観測史上初の高気温が報告されていますが、気候変動の下でこうした事象が数十倍~数百倍起こりやすくなった、あるいはそもそも起こりえない出来事が起こるような時代になっています。


今日起きているような異常気象は人的コストを伴います。気候変動への適応は、財政的な資源にとどまらず、社会基盤・情報および行政能力といった資源を必要とします。8月4日、Nature Climate Change誌の論説は、気候変動のインパクトは世界で一律でないのと同様に、社会の適応能力にも大きなばらつきがあるとし、弱者に対する適応支援強化を訴えました。 

論稿は、気候変動の負荷を最も受けるとされているグローバル・サウスについて、気候変動下でのリスクを削減する気候変動適応能力を評価する必要性に言及しました。気候変動の適応力は、世界的なモデル・シミュレーションで殆ど検討されることはありませんでしたが、最近、適応能力の異なる側面を反映する研究も現れ始めているとのことです。気候変動インパクトを推計するモデルの中には、社会の適応能力の参考となる指標として、絶対的貧困、都市化、人口規模、政府による汚職のコントロール度、ジェンダー平等、を考慮し、適応の経済費用に配慮するものも出てきています。

論稿は、モデルの精緻化と同時に、歴史的あるいは現在何らかの事情で不利な状況に置かれてきた人々を優先し、気候変動適応能力に乏しい国・社会へのキャパシティ向上を訴え、現地の人々の声が届くシステム整備の必要性を説きました。

 

(参考文献)
Supporting adaptation. Nat. Clim. Chang. 13, 749 (2023). https://doi.org/10.1038/s41558-023-01771-9

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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