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834. 2023年7月熱波に対する気候変動の痕跡

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834. 2023年7月熱波に対する気候変動の痕跡

2023年7月は、歴史的に最も暑い月となりました。

8月2日、気候変動科学に関する情報提供を行う非営利団体のClimate Centralは、7月に観察された熱波における人為的な気候変動の痕跡は明らかで、世界人口の81%に相当する65億人の人々が影響を受けたと発表しました。

世界の平均気温は高くなっていますが、人々は住んでいる地域における日々の気温の変化や気象パターンのシフトを通じて気候変動を経験しており、いわゆる「世界平均気温」を体験することはありません。Climate Centralが公表している気候シフト・インデックス(Climate Shift Index)は、実際人々が住んでいる地域において経験する日々の気温を人為的な気候変動がシフトさせる確率(オッズ)を数量化したものだそうです。CSIは、気候変動がなかった場合に想定される気温分布に対し、実際に観察される気温分布の比率、を表し、マイナス5~ゼロ~プラス5の11段階で示されます。例として、異常な熱波が観察された場合、CSIレベル3は気候変動によって3倍起こりやすくなったケース、CSIレベル5は5倍あるいはそれ以上起こりやすくなった例外的なケース、を意味するそうです。

Climate Centralは世界の200か国・4700以上の都市における、2023年7月1日から7月31日までのデータを分析しました。 

分析によると、2023年7月、世界人口の81%に相当する65億人の人々が、少なくともCSIレベル3の状況を1日以上経験、少なくとも20億人の人々が31日間毎日CSIレベル3以上の気候変動の影響を受け、約870の都市が少なくともCSIレベル3以上の熱波を25日以上経験しました。とくに熱帯気候の下では相対的に小さな日毎の気温変化にも気候変動の影響は大きいとされ、赤道付近あるいは島嶼国の住民はとりわけ大きな影響を受けたことが推定されます。

報告書は、人類が化石燃料を使い続ける限り、CSIレベル1~5の異常な熱波が今後も頻度を増すことを予想しています。

 

分析に使用されたデータによると、日本において分析対象となった98行政都市のうち、2023年7月にCSIレベル3以上の日を経験しなかったのは、北九州市・倉敷市・福山市・高松市の4都市のみ、逆に岐阜市・福井市・水戸市ではCSIレベル3以上を20日以上、CSIレベル5以上を10日以上経験しました。日本も含め、世界は地球「沸騰化」の影響を免れない時代になりつつあるのかもしれません。

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)


 

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