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53. The Lancet論説 ― 気候変動と熱中症

そろそろ日本でも熱中症の危険がある季節に突入します。2020年5月にThe Lancet誌で公表された論説は、熱中症の死亡率が過小評価されている可能性に言及しつつ、気候変動・環境変化が人間の健康に与える影響を把握する必要性を訴えました。異常な環境災害が日常化するにつれ、地域・国レベル・世界レベルでの対応策の指針とするエビデンス提供のために、因果関係の分析が必要となります。

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52. 新型コロナウイルス・パンデミック -アフリカにおけるフードサプライチェーン

アフリカ開発研究、とくに農業・食料問題の分野で多くの成果を挙げるミシガン州立大学の研究者は、アフリカにおけるフードサプライチェーン(FSCs)の重要性を強調しました。消費される食料の平均80%がフードサプライチェーン(FSCs)を通じて購入されており、FSCsにおける食料供給の85%程度が中小企業によって取り扱われ、国内FSCs供給はアフリカ食料市場の80-90%を占め、FSCsは都市・農村雇用にとって重要な役割を果たしています。

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51. 新型コロナウイルス・パンデミック -人間開発の危機

国際連合開発計画(UNDP) は、平均余命、教育及び所得指数を複合的に捉えた人間開発指数(Human Development Index, HDI)を毎年公表しています。2020年5月20日、UNDPは、今年、HDIが1990年に導入されて以来30年間で初めて下落する可能性について述べ、懸念を表明しました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、保健・教育・所得の3側面に打撃を与えることで、2007-09年の世界金融危機でも経験しなかった人間開発の危機をもたらしています。

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50. 新型コロナウイルス・パンデミック -COVID-19 vs.気候変動対策に関する主要国意識調査

英国の市場調査会社であるIpsos MORIは、2020年4月、主要国におけるCOVID-19と気候変動や環境問題に関する意識調査を発表しました。世界の国々と比べ、調査時において、日本は気候変動をCOVID-19同等の危機とみなし、政策的な優先事項と捉え、COVID-19による経済復興は環境に負の影響をもたらすべきではないという意見が多いながらも、政党による気候変動・環境問題の政治アジェンダ化の期待は必ずしも相対的に高くないようです。

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49. 新型コロナウイルス・パンデミック -Nature Climate Change 論文:COVID-19下の強制的待機による一時的な二酸化炭素排出量削減の推計

2020年5月19日、Nature Climate Change誌で、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)下の強制的自宅待機(隔離・移動制限)による一時的な二酸化炭素排出量の削減(Temporary reduction in daily global CO2 emissions during the COVID-19 forced confinement)」論文が発表されました。著者らは、政策が排出量に与える影響の度合いを捉えるインデックスに基づいて排出量を推計するアプローチを考案し分析を行った結果、2020年4月初頭までに、日ごとの世界的な二酸化炭素排出量は2019年比でマイナス17%減少したと推計され、その半分程は陸上輸送の変化によるものとされました。危機後の政策・経済インセンティブが、今後数十年にわたる世界的な二酸化炭素排出量の方向性を決定づける可能性があります。

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48. 新型コロナウイルス・パンデミック -COVID-19による貧困削減トレンドの逆転

国際社会は、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) により、近年の貧困削減の進歩が逆転し、貧困状態にある人々の数が急増しかねない状況に陥っています。貧困国では仕事に行かなければ収入はなく、収入の減少は食料不足に直結します。世界銀行の分析によると、サブサハラ・アフリカ地域では、パンデミックによって一人当たりGDP成長率が5~7%下落してマイナスに転じ、絶対的貧困層が追加的に2600万~5800万人増加、貧困率は2%上昇して、過去5年間の貧困削減の進展を払拭しかねないと予測されています。経済危機と貧困増加が懸念されるケニアでは、2020年5月23日、大統領が大規模景気刺激策を発表、小規模農民や花卉・果物産業への予算措置を含む支援策が明らかにされました。

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47. 新型コロナウイルス・パンデミック -国連:統計からみるCOVID-19による世界変化

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界をひっくり返すほどの衝撃をもたらしています。生活の在り方、仕事・コミュニケーションの仕方、移動の手段を含め、人々の生き方のあらゆる側面が影響を受けています。今から数か月間になされる意思決定は、数世代にわたり影響を及ぼしかねず、政府は最良の情報に基づいて政策決定をする必要があります。36の国連機関・国際組織をメンバーとする統計業務統括委員会は、「COVID-19は世界をどう変えているか:統計的視点」を発表しました。報告書は、数か月前には予想にもしなかったCOVID-19の経済的・社会的インパクトや地域的なトレンドのハイライトを示しています。

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46. 国際生物多様性の日

毎年5月22日は国際生物多様性の日 (International Day for Biological Diversity) であり、生物の多様性が失われつつあること、また、それに纏わる諸問題に対する人々の認知を広めるために国連が制定した記念日だそうです。2020年は、「解決策は自然の中にある: Our solutions are in nature」をテーマとしています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックを踏まえても、国際社会は自然界との関係を見直す機会に直面しています。2020年は、2011-2020年生物多様性戦略計画の最終年かつ、2011-2020年国連生物多様性の10年最終年でもあります。

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45. 新型コロナウイルス・パンデミック ― COVID-19の漁業・養殖業への影響

水産業は国際貿易に大きく依存しているため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック対策として取られた移動・流通の規制や制限は水産物市場の急激な冷え込みを招きました。消費者需要の減退により水産物バリューチェーンは危機に直面しています。物資の不足により、COVID-19感染を防ぐための適切な労働環境確保も困難な状況が続いています。このような状況において、新たな直販システムの構築など、パンデミック後を見据えた水産業の動きも起こり始めています。

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44. 新型コロナウイルス・パンデミック - 世界経済フォーラム:COVID-19リスク見通し

世界経済フォーラム (World Economic Forum)は、世界的なリーダーや政策立案者の意見を反映した「グローバル・リスク報告書 」を毎年発表しています。今年初めに公表された2020年版報告書では、報告書の調査開始(2007年)以来初めて、認識される上位5件全てのリスクが環境問題・気候変動に関するものでした。2020年5月19日、同報告書の編纂に関わるチームが、パンデミックによるリスク・挑戦・機会をとりまとめた「COVID-19リスク見通し:先行的なリスク位置付けと含意」を発表、賢明な意思決定と議論の拠り所となる情報を提供しました。約350人のリスク分析専門家への意識調査の結果、経済シフト・持続性追求の後退・社会不安・技術依存、の4つの重要な課題が現れてました。

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43. 新型コロナウイルス・パンデミック - FAO: 食料危機におけるCOVID-19のインパクトに対応せよ

2020年5月18日、国連食糧農業機関 (FAO) は、「2020年4-12月期 食料危機におけるCOVID-19のインパクトに対応せよ (Addressing the impacts of COVID-19 in food crises April–December 2020) 」報告書を公表、国際社会による緊急支援の必要性を訴えました。食料危機の回避あるいは悪化を食い止めるために、保健医療危機の解決を待ってはいられず、予備的な措置によって生活を守り、食料へのアクセスを改善しなければなりません。

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42. 新型コロナウイルス・パンデミック ―国連環境計画 (UNEP): 環境破壊と人獣共通感染症 (zoonotic diseases)

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) パンデミックが収まらない現在ですが、2016年に国連環境計画 (UNEP)が公表した報告書では、今後新たに発現する環境課題の一つとして人獣共通感染症 (zoonotic diseases)が挙げられていました。人獣共通感染症の発現は、人為的な環境変化や生態系の攪乱と関わっており、日和見的に環境・社会・経済的ストレス下に置かれた宿主に影響を与えます。全ての新規感染症の75%、人間が罹患する感染症の60%は人獣共通感染症とされ、エボラ、鳥インフルエンザ、中東呼吸器症候群MERS、リフトバレー熱、重症急性呼吸器症候群SARS、ウェストナイルウイルス、ジカウイルス、など、莫大な経済費用をもたらします。人獣共通感染症対策には、多様な種を維持する生態系の維持が必要とされ、環境・農業・保健の3分野にまたがる政策協調の枠組み強化が必要です。

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41. 新型コロナウイルス・パンデミック ― ロックダウン下の青果物グローバル・サプライ・チェーン

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 拡大の影響で、日本でも海外産フルーツに品薄感が広がっています。「ノーマル」時には、フルーツや野菜のような生鮮食品かつ高付加価値農産物を含む国際貨物の4割は、世界中に張り巡らされた旅客機ネットワークを活用した効率的なグローバルサプライチェーンで取引が行われていました。ロジスティック専門家は、旅客機減便に伴う貨物運賃の上昇は青果物の国際輸送を割高にし、COVID-19後の「ニューノーマル」期に、グローバルな合理化による事業移転が起こる場合、新興国の生産者が打撃を受ける可能性に言及しました。

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40. 新型コロナウイルス・パンデミック ―国際農業開発基金 (IFAD) - COVID-19 対策によるアフリカ農業と農村貧困層支援

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックは、アフリカ農業と農民に大きな打撃を与えています。2020年5月14日、国際農業開発基金の特使であるオルシェグン・オバサンジョ元ナイジェリア大統領とハイレマリアム・デサレン・ボシェ元エチオピア大統領は、「COVID-19対策はアフリカ農業と農村貧困層をターゲットとすべきである」と寄稿文を寄せました。

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39. 2020年世界栄養報告:公正への活動で栄養不良に終止符を

2020年世界栄養報告(2020 Global Nutrition Report)が発行されました。現在、世界で9人に1人が栄養不足であり、3人に1人が過体重です。今年の報告書の副題は、あらゆる形態の栄養不良を終わらせる上での不公正の影響を明らかにしています。報告書自体は新型コロナウイルス(COVID-19)前に編集されていますが、序文でパンデミックについても触れ、栄養はストレスへの強靭性を持つために非常に重要な要素であり、あらゆる形態の栄養不良に対する取り組みを強化するよう、政府、企業、市民社会に呼びかけています。

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38. 新型コロナウイルス・パンデミック ― 国連食糧農業機関 (FAO) 2020年5月食料価格動向速報

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックは、世界的な経済不況をもたらしています。穀物市場においては現段階では危機的な価格高騰は回避できていますが、国際社会では、刻々と変化する食料輸出国による政策の動きを含み、食料価格に影響を与える様々な要因をモニターしていく必要性の認識が共有されています。 国連食糧農業機関(FAO) は、世界・地域・国レベルでの最新価格動向について、食料価格動向速報(Food Price Monitoring and Analysis: FPMA Bulletin Monthly Report)を公表し、とくに価格上昇が観察される国々の事情について詳細な情報を提供しています。2020年5月速報によると、2020年4月、前月に比べ、小麦価格とコメ価格は上昇、メイズ価格は下落しています。

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37.養分利用に優れた稲作技術開発でマダガスカルの食料安全保障に貢献

マダガスカルは、豊かな生態系や珍しい動植物で知られていますが、この国の農業は稲作を基盤とし、日本の2倍以上のコメが消費されています。一方で、イネの生産性は停滞しており、農村地域の貧困削減を妨げてきた結果、マダガスカルは世界の最貧国の一つにとどまっています。イネの生産性を阻害する要因として、農家が貧しいために肥料を購入する資金が少ないこと、アフリカ特有の風化土壌に起因する乏しい養分環境をもつことが挙げられます。そこで、国際農研は、肥料と土壌からの養分供給が少ない条件でも安定的にイネの生産性を改善できる技術開発を目指し、現地研究機関とプロジェクトを実施しています。最近の研究ハイライトとして、少ないリン肥料でイネの収量を大幅に改善できることを現地農家圃場で実証しました。

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36. 新型コロナウイルス・パンデミック ― 東アフリカ共同体による国境間サプライチェーン・モニタリングと地域農業振興支援声明

東アフリカ共同体(East African Community: EAC)は東アフリカ諸国により結成された地域共同体ですが、海岸線を有するのはケニアとタンザニアのみで、残りの内陸国にとり、食料・燃料・医療品を含む国境間(cross-border)の物流は国家経済の生命線でもあります。2020年5月12日、EAC6か国中、ルワンダ・ケニア・ウガンダ・南スーダンの4か国首脳は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックとの戦いの間も、国境を越えた物流が途絶えることがないよう共同声明を出しました。首脳らは、現在のパンデミック、そしてポストCOVID-19を見据え、農民による農業活動が中断されることなく継続されるよう配慮し、農業加工・付加価値化や地域レベルでの農業振興を支援することを表明しました。

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35. Nature Food論文:食料供給と需要の “距離” ローカル・フードシステム 対 国際貿易 

農業は本質的にローカルな生産活動であるのに対し、食産業はグローバルに展開され、今日、世界中の人々が多かれ少なかれ輸入食料に依存しています。COVID-19が契機となり、食料供給と需要をより近いものにしようとするフードシステムのローカル化が議論されることになるでしょう。2020年4月にNature Foodに発表された論文は、6作物群について食料生産と消費の間の潜在的最小距離を推計、収量向上やフードロス削減のシナリオも検討しました。分析の結果、半径100㎞の範囲で需要を満たすことができるのは世界人口の三分の1以下と推定され、多くの人々にとり需給距離は1,000㎞を超え、食料供給を輸入に依存せざるをえない状況が浮かび上がりました。収量向上やフードロスの削減は、アフリカやアジアでローカル生産による需要充足に繋がりますが、安定的な食料供給のためにはグローバルサプライチェーンも必要です。著者らは、本研究は、政策提言ではなく、むしろローカル・フードシステム対国際貿易を巡る議論への拠り所となる全体像を提供することを期待しています。

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34. HarvestPlus:生物学的栄養強化(Biofortification)― 「隠れた飢餓」撲滅への期待

世界は、飢餓・栄養不足、肥満・栄養過多、微量栄養素欠乏、という三つの栄養課題に直面しているとされています。中でも微量栄養素欠乏は「隠れた飢餓(Hidden Hunger)」とも称され、重要栄養素の摂取効率や代謝や免疫に大きな影響を及ぼします。2020年5月現在、国際社会が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック封じ込めに取り組む中、感染症等への強靭性強化の観点からも栄養の重要性が浮き彫りになっています。HarvestPlusは、開発途上国における脆弱な人々を対象に、亜鉛・鉄分・ビタミンAなどの微量栄養素に富んだ作物の生物学的栄養強化(biofortification)の育種・開発と普及に取り組んでいます。