Pick Up
183. 気候変動は感染症のリスクを変化させかねない
このPick Upで紹介される論文や報告書も指摘するように、農業は土地利用変化の最大の要因であり、土地利用変化は野生動物・家畜・人間の接触機会を増加させることで人獣共通感染症の発現を増加させる傾向にあります。他方、温暖化自身と感染症の間には何か関係があるのでしょうか。
Scienceに掲載された論文によると、気候変動は感染症のパターンと強度に関する変化を引き起こしているように見受けられます。例えば、冷涼な条件において、温暖な気候由来の両生類は、冷涼な地域の宿主と比較し、高いツボカビ感染を経験します。論文は、宿主―病原菌の関係に関する気温ミスマッチ仮説についてメタ分析を行いました。その結果、真菌症のリスクは温暖な気候における異常冷涼気象で大幅に上昇し、細菌感染症の頻度は冷涼な気候における異常な高温気象において上昇しうること導き出されました。論文によると、温暖化はほかのパラサイトと比較しても寄生蠕虫を利するものである一方、ウイルス感染症と気候変動の間の明確な関係については明らかではありませんでした。
参考文献
Jeremy M. Cohen et al. Divergent impacts of warming weather on wildlife disease risk across climates, Science (2020). DOI: 10.1126/science.abb1702
(文責:研究戦略室 飯山みゆき)